■市民対象に調査
医療機関や自宅からの近さではなく、信頼できる薬剤師がいることを重視して薬局を選択している一般市民の薬の理解度は、そうでない市民に比べて高い――。昭和薬科大学教授・臨床薬学教育研究センター長の山本美智子氏らの調査によって、そんな相関関係が明らかになった。かかりつけ薬剤師の存在意義に注目が集まる中、その有用性の一端が示された。ただ、一般市民の約6割は依然として医療機関からの近さで薬局を選んでおり、信頼関係の構築が課題になることも浮き彫りになった。
山本氏らは、薬局での情報提供の実態などについて、一般市民550人を対象にインターネットを活用して調査を実施した。薬局を選ぶ基準を聞いたところ「医療機関から近い」(59.1%)との回答が最も多く、「家から近い」(24.2%)、「信頼できる薬剤師がいる」(6.9%)、「あてはまるものはない」(5.1%)、「待ち時間が短い」(2.9%)、「薬局の設備がよい」(1.1%)と続いた。
信頼できる薬剤師がいると答えた一般市民の薬の理解度は高く、それ以外の一般市民の理解度を上回っていた。具体的には「用法用量」の理解度は、それ以外の一般市民では66.4%だったのに対し、信頼できる薬剤師がいると答えた一般市民では94.1%と高かった。「服用期間」は66.7%に対して96.1%、「副作用」は64.5%に対して85.9%、「相互作用」は49.5%に対して83.2%など、全項目で理解度は高かった。
山本氏らは「信頼関係がある薬剤師のいる薬局では、患者の理解度が高い傾向にあった」と言及。ただ、薬局を選ぶ基準として医療機関からの近さを重視する一般市民が過半数を占めていたことから、信頼関係の構築が課題としている。
このほか山本氏らは、薬局におけるOTC薬や健康食品の情報提供の実態について、一般市民550人への調査結果と、薬局薬剤師155人に対する紙面でのアンケート調査結果を比較した。
OTC薬の情報提供の満足度について一般市民は「あまり十分ではない」(32.0%)、「受けたことがない」(29.6%)、「十分ではない」(6.7%)との回答が多く、「かなり十分である」(2.4%)、「十分である」(29.3%)を上回っていた。
OTC薬の相談を受けた経験がある薬剤師にその情報提供について聞いたところ「できた」(2.6%)と「ややできた」(32.9%)は合わせて35.5%にとどまり、「ややできない」は11.0%、「できない」は3.9%、「どちらともいえない」は27.1%となっていた。
健康食品の情報提供の満足度について一般市民は「不十分」(13.8%)、「やや不十分」(18.9%)、「どちらともいえない」(50.0%)との回答が多く、「かなり十分」(3.6%)、「十分」(13.6%)を上回っていた。薬剤師側も「不十分」(25.2%)、「やや不十分」(46.5%)、「どちらともいえない」(18.7%)の回答が多く、「かなり十分」(1.9%)、「やや十分」(7.1%)との回答は少なかった。
山本氏らは「OTC薬の説明が十分と答えた一般市民と、情報提供ができたと思う薬剤師の割合は、どちらも3割を超える程度だった。健康食品の情報提供が十分と答えたのは、一般市民は2割弱、薬剤師は1割弱にとどまっていた」とし、「OTC薬、特に健康食品での情報提供の改善が必要」としている。