高齢者の進展に伴い、薬物療法において腎機能や肝機能の低下など薬物動態の変化、合併症によるポリファーマシーの増加とそれに伴う副作用の増強、飲み忘れや服薬管理の必要性が高い患者の存在など、多くの問題が顕在化している。こうした状況を受け、高齢者の薬物療法に関する安全対策を進めるため、薬の安全性情報の提供のあり方などに焦点を絞って検討会で議論することにした。
厚労省は、高齢者が使用している薬剤のうち、特に精神神経用剤で意識障害や抑うつ、せん妄、めまい、転倒などの副作用が見られる問題を挙げ、添付文書で高齢者への投与や併用について注意喚起を行っていることを説明。ただ、こうした情報提供は複数の薬剤をまとめたものとして行われていないことから、高齢者の多剤処方などに関する安全対策を充実させていく方針を示した。
高齢者における薬の処方状況や実態の把握を実施するほか、高齢者の薬物動態や副作用の状況を把握し、ポリファーマシーを最適化するための指針策定や高齢者に適した用法・用量の薬の実現につなげる。
これらエビデンスの収集や対策が必要な疾患領域、ガイドラインなどを検討し、今夏までに高齢者の薬物療法に関する安全対策を中間的に取りまとめ、18年度末をメドに最終的な取りまとめを行いたい考え。
初会合では、平井みどり委員(神戸大学名誉教授)がポリファーマシーの現状と課題を説明した。複数の薬剤を投与されていた要介護5の認知症終末期患者について、薬を1品目に削減した結果、要介護1に改善した例などを紹介。ポリファーマシーを適正化することの重要性を強調した。
秋下雅弘委員(日本老年医学会理事)は、老年医学会がまとめたポリファーマシーの適正化に関するガイドラインを紹介した。その上で、高齢者の用法・用量を設定する場合は低体重・BMI低値や認知機能低下、多疾患併存や多剤併用、年齢などを検討する必要があると提言した。
また、今後の議論の方向性をめぐって、委員からは「医療用医薬品とほぼ同等の効果を持つOTC薬が出回っており、大量に服用されればポリファーマシーを助長する。OTC薬やサプリメントも含めて議論すべき」などの意見が出た。