線維芽細胞増殖因子23に対する完全ヒトモノクローナル抗体
協和発酵キリン株式会社は4月19日、欧州子会社であるKyowa Kirin International PLCと米国のウルトラジェニクス・ファーマシューティカルと共同で、成人X染色体遺伝性低リン血症(XLH)を対象としたburosumab(KRN23)の第3相臨床試験の結果を発表した。
burosumabは、同社により発見された線維芽細胞増殖因子23(FGF23)に対する完全ヒトモノクローナル抗体。FGF23は、腎臓におけるリン排泄と活性型ビタミンD産生を制御することで、血清リンおよび活性型ビタミンD濃度を低下させる液性因子。burosumabは 、このFGF23の過剰発現に由来した疾患であるXLHおよび腫瘍性骨軟化症(TIO)を対象として、ウルトラジェニクスと協和発酵キリンが開発を行っている。XLHおよびTIOの患者のFGF23の過剰な作用を阻害することで、腎臓におけるリンの再吸収を増加させ、腸管におけるリンとカルシウムの吸収を促進するビタミンDの産生を増加させる。
主要評価項目、プラセボ群の8%に対してburosumab投与群は94%
今回発表された第3相臨床試験は、無作為化プラセボ対照2重盲検比較試験。米国、欧州、カナダ、日本および韓国における134名の成人XLHの患者を対象に、4週に1度のburosumabの投与(1mg/kg)による有効性と安全性を評価した。同試験において、血清リン濃度の正常値下限を超えて上昇し、その血清リン濃度が24週にわたり正常値下限以上を維持した被験者の割合は、プラセボ群で8%であったのに対して、burosumab投与群では94%で(p<0.0001)、同試験の主要評価項目を達成したという。
一方、主な副次評価項目では、24週時点において、関節のこわばりについてはburosumab投与群で平均7.87ポイント改善したが、プラセボ投与群では、0.25ポイント悪化(p=0.0122)。運動機能は、burosumab投与群で3.11ポイント改善し、プラセボ投与群で1.79ポイント悪化した(p=0.0478)。また、痛みに関するQOLの改善度はburosumab投与群で0.79ポイント改善した一方、プラセボ投与群では0.32ポイントの改善だった(p=0.0919)。なお、有害事象および治療関連の有害事象、重大な有害事象の発生頻度は2群間で違いは認められなかったという。
なお、現在は14名の成人XLH患者を対象に、XLHにみられる病理学的変化である骨軟化症の改善の評価を目的に、骨生検の実施を伴うオープンラベルの骨評価第3相臨床試験を別途実施中。同試験は、骨に対するburosumabの効果をより直接的に評価することにより、今回発表された第3相臨床試験で得られたリンと患者の症状に関するデータを補完するものとなる。
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・協和発酵キリン株式会社 ニュースリリース