変異細胞を排除する代謝変化の分子メカニズムを解明
北海道大学は4月18日、がん化の超初期段階で起こる代謝変化を世界で初めて解明したと発表した。この研究は、同大学遺伝子病制御研究所の藤田恭之教授と、京都大学、金沢大学、慶應義塾大学、大阪大学、University College Londonの共同研究グループによるもの。研究成果は、「Nature Cell Biology」に掲載された。
画像はリリースより
がんは、細胞社会の細胞のひとつに変異が生じることから始まるが、研究グループはこれまでに、新たに生じた変異細胞の多くが周りの正常細胞との競合の結果、体外へ排除されることを明らかにしていた。しかし、どのようにして変異細胞が排除されるのか、その分子メカニズムについては明らかになっていなかった。
「世界初のがん予防薬」の開発に期待
研究グループは今回、独自に確立した培養細胞系とマウスモデルを用いて、正常細胞に囲まれた変異細胞におけるさまざまな栄養物やエネルギーなどの代謝経路について解析。その結果、正常細胞に囲まれた変異細胞では、ミトコンドリア機能の低下と解糖経路の亢進というふたつの代謝変化が生じていることを突き止めた。この代謝変化は変異細胞の周囲に存在する正常細胞からの影響で生じたものであり、変異細胞の体外への排除に重要な役割を果たしていることがわかったという。
さらに、これらの代謝変化は、がん発生の中期から後期にかけてがん細胞に生じる「ワールブルグ効果」と同様であることも判明した。今回の研究により、正常細胞が備えているがん細胞を駆逐する能力の一端が明らかになった。これらの成果は、これまでブラックボックスであったがんの超初期段階で生じる現象を明らかにするもの。新たながん研究分野の開拓につながる可能性があるとして、研究グループは「世界初のがん予防薬」の開発にもつながることが期待されると述べている。
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・北海道大学 プレスリリース