ドレブリンが減少すると感染しやすい状態に
群馬大学は4月18日、ロタウイルスの感染の制御メカニズムを解明し、ドレブリンというタンパク質が、ロタウイルスの腸への感染を防ぐ門番として働いていることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科神経薬理学分野の白尾智明教授らの研究グループと、スタンフォード大学の共同研究によるもの。研究成果は「米国科学アカデミー紀要」オンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
ロタウイルスは、感染力が強く激しい下痢や嘔吐の症状を示し、特効薬がまだ開発されていないために、世界では毎年、乳幼児で約50万人が死亡している。ロタウイルスは小腸の上皮細胞に吸着後、細胞の中に侵入(エンドサイトーシス)し増殖するが、エンドサイトーシスの制御機構は不明だった。スタンフォード大学の研究グループは、ロタウイルスが細胞に感染する時に働くVP4というタンパク質に注目して研究しており、質量分析器を用いてVP4と結合するタンパク質を網羅的に探したところ、ドレブリンが見つかり、群馬大学との共同研究がスタートしたという。
アルツハイマー病治療薬の開発にも期待
今回の研究では、ドレブリンがロタウイルスの感染に関わっているかを調べるために、遺伝学的・薬理学的にドレブリンの働きを弱めて、ロタウイルスの感染程度を調査。その結果、ドレブリンの働きを弱めるとロタウイルスの感染が強くなることが明らかになったという。実際に、ドレブリンを持たないドレブリンノックアウトマウスは、ロタウイルスに感染すると下痢の症状が重くなることも明らかになった。
また、ロタウイルスが細胞に感染する時には、エンドサイトーシスを使って侵入することがわかっているが、ドレブリンはダイナミン依存的エンドサイトーシス機構を抑制することでロタウイルスの感染を防いでいることもわかったという。
ドレブリンは、ロタウイルスに限らず種々のウイルスやコレラ毒素などのダイナミン依存性のエンドサイトーシスを抑制しているということがわかり、細胞の一般機能への関与が示唆された。さらに、ドレブリンはアルツハイマー病で減少していることもわかっている。アルツハイマー病では神経細胞におけるダイナミン依存性のエンドサイトーシスが亢進している可能性があり、ロタウイルス感染だけでなく、新たなアルツハイマー病の治療薬開発につながることも期待されると研究グループは述べている。
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・群馬大学 プレスリリース