動脈硬化症や肥満・糖尿病等のリスクファクター
東北大学は4月17日、動脈硬化症や生活習慣病などのさまざまな疾患のリスクファクターとされるトランス脂肪酸が、自己由来の起炎性因子のひとつである細胞外ATPにより誘導される細胞死を促進することを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院薬学研究科の平田祐介助教、野口拓也准教授、松沢厚教授、青木淳賢教授、福永浩司教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Biological Chemistry」(電子版)に3月29日付けで掲載されている。
トランス脂肪酸は、トランス型の炭素-炭素間二重結合を含む脂肪酸の総称で、主に食品製造過程において人工的に産生される。これまでの疫学的な調査から、トランス脂肪酸は動脈硬化症等の循環器系疾患や肥満・糖尿病等の生活習慣病のリスクファクターとされているが、分子・細胞レベルでの知見に乏しく、疾患発症機序はほとんど解明されていなかった。
動脈硬化症等の疾患メカニズム解明に期待
今回の研究では、トランス脂肪酸摂取による疾患発症リスクが特に高いとされている動脈硬化症において、病巣における自己由来の起炎性因子(damage-associated molecular patterns:DAMPs)の漏出やマクロファージの細胞死が病態発症に関連することに着目。DAMPsのひとつである細胞外ATPによって誘導されるマクロファージの細胞死に対するトランス脂肪酸の影響を調べた。
その結果、食品中含有量の最も高いエライジン酸をはじめとしたトランス脂肪酸が、細胞外ATP誘導性細胞死を著しく促進することを見いだしたという。細胞外ATPは、細胞膜上のプリン受容体P2X7のリガンドとして作用し、その下流でストレス応答性キナーゼASK1を介したp38MAPキナーゼ経路活性化によって細胞死を引き起こすことが知られている。詳細な解析から、トランス脂肪酸は、細胞外ATPによって誘導されるASK1-p38経路の活性化を亢進することで、細胞死を促進することが明らかになったという。
この研究で明らかになったトランス脂肪酸による細胞死亢進作用は、その摂取に伴う動脈硬化症発症・進展に寄与していることが想定され、これまで未解明だった疾患発症機序の一端の解明に繋がる発見になったと研究グループは述べている。
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・東北大学 プレスリリース