従来の光スキャナーに比べ、大幅に高速・小型・低消費電力
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は4月14日、NTTアドバンステクノロジ株式会社、大阪大学と共に、特殊な電気光学特性を持つKTN結晶を用いた、小型、高速、低消費電力で駆動する光スキャナーにより、世界で初めて硬性内視鏡による生体組織の3次元イメージングに成功したと発表した。この成果は、4月19~21日の間、パシフィコ横浜で開催される「レーザーEXPO2017」のNTTアドバンステクノロジのブースにて展示予定。
画像はリリースより
KTN(タンタル酸ニオブ酸カリウム)結晶は、電圧で屈折率が変わる特殊な電気光学効果を持つ材料で、その効果は既存材料の中で最大だ。この効果により光の偏向(スキャン)を従来材料の1/100の電圧で実現でき、レーザー光を偏向するデバイス(光スキャナー)に用いることで、従来の光スキャナーに比べ、大幅に高速・小型・低消費電力で駆動させることが可能となる。
組織内部をリアルタイムにイメージング、低侵襲な診断・治療が可能に
3者は今回、KTN結晶を用いた光スキャナー(KTN光スキャナー)を硬性内視鏡に組み込んだ。硬性内視鏡が要求する実用的な大きさを実現するためには、KTN結晶の優れた電気光学特性が不可欠で、KTN結晶だからこそ実現できた応用例となる。さらに、この硬性内視鏡を光干渉断層計(OCT)と組み合わせて用いることで、世界で初めて硬性内視鏡による生体組織の3次元イメージングに成功。これにより、体の表面に小さな穴を開けるだけで、組織内部をリアルタイムにイメージングでき、低侵襲な診断・治療が可能になるという。
開発した硬性内視鏡は、患部表面を面的に捉えるKTN光スキャナーと、患部の深さ方向の生体組織を高精細に観察できるOCTを組み合わせることで、3次元イメージの取得を可能にしている。硬性内視鏡の先端部には、レーザー光を体内に届けるための直径7mm、長さ53mmのレンズを装着。このレンズを体の表面に開けた小さい穴から体内に挿入して患部のイメージングを行う。今回は、実際に体内に挿入はせずに、ヒトの指の表面から3次元イメージを取得。汗腺、真皮等の複雑な内部構造を十分にイメージングできたことから、実用レベルの分解能が得られていることを確認したという。
今後、NTTアドバンステクノロジは、動物実験や臨床試験を実施し、医療機器としての実用性を検証する予定。さらに、内視鏡手術に係る幅広い医療分野への展開を目指し、診断機器としての利用に加えて、レーザー光を有効活用した治療装置への展開を進めていくとしている。
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