■薬剤費に差なし、枚数は減
2016年度診療報酬改定で導入された湿布薬の1処方当たり70枚制限について、外来患者に対する処方の影響を検証した結果、薬剤費総額に大きな差はみられず、医療費削減効果はほとんどなかったことが、信州大学病院薬剤部の調査で明らかになった。同院では改定後に71枚以上の処方箋割合は減少した一方、処方上限の70枚が処方されている処方箋が増加。不要な湿布薬への意識が高まる効果は見られたものの、薬価が低いこともあり、院内の外来で処方された湿布薬の薬剤費総額への影響は数万円程度と少なかった。
16年度改定では、医薬品の適正給付を目的に湿布薬の取り扱いが見直された。入院中以外の患者に1処方当たり70枚を超えて投薬した場合、調剤料、処方料、処方箋料、70枚を超えた分の薬剤料等が算定できず、70枚以上を処方する場合は、医師が理由を処方箋とレセプトに書くことになった。そこで、同院薬剤部は、16年度改定が外来患者における湿布薬処方にどのような影響を与えたか検証を行った。
同院で採用している湿布薬は、院内においては「MS温シップ『タイホウ』」「アドフィードパップ40mg」「カトレップパップ70mg」「モーラステープL40mg」など、院外では「モーラステープ20mg」「モーラスパップ30mg」「ロキソニンテープ100mg」「ロキソニンパップ100mg」などとなっている。
これらについて、昨年1月から6月に同院で湿布薬が処方された外来処方箋を抽出し、その件数と湿布薬が70枚を超えた処方箋件数を集計。院内の外来で処方された湿布薬の薬剤費総額も算出した。同院の外来処方は90日を限度としているため、昨年1~3月を改定前、4~6月を改定後と設定し、改定前後3カ月間の変化を比較した。
その結果、湿布薬の処方箋件数は改定後に増加したが、上限の70枚を超えた処方箋の割合は改定前の30%程度から改定後は4%程度に大きく減少。処方された湿布薬の総枚数も改定前から約2万枚減ったほか、処方箋1枚当たりの湿布薬枚数も減少したことが分かった。同院薬剤部は、「改定により不要な湿布薬を処方しない意識が高まったことが影響している」と分析した。
ただ、湿布薬が71枚以上の処方箋の割合は減少したものの、薬剤費の総額については数万円程度の減少にとどまり、明らかな差は見られなかった。湿布薬の薬価が低いことに加え、改定前に71枚以上処方されていた患者の多くが上限の70枚の処方に変更となり、院内の外来で処方された湿布薬の総額への影響が少なかったことが考えられた。
湿布薬の薬剤費総額は、上限を70枚に制限した改定後も大きな変化が見られなかったが、この傾向は調査対象期間後の昨年7~8月にかけても変わらなかったという。これらを踏まえると、16年度改定で医薬品の適正給付を目的に導入された湿布薬の1処方70枚制限は、薬剤費の総額にあまり影響を与えず、医療費の削減効果はほとんどなかったと見られる。