JCQモデルで仕事ストレスと関連性のある血液マーカーを検討
岡山大学は4月12日、JCQモデルを用いて仕事ストレスと関連性のある血液マーカーを検討、血清中のアルギナーゼ1が指標のひとつとなることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大学大学院医歯薬学総合研究科(医)公衆衛生学の荻野景規教授、伊藤達男助教、長岡憲次郎助教の研究グループによるもの。研究成果は「PLOS ONE」に4月12日付けで掲載されている。
過剰な労働によるストレスは睡眠障害、抑うつなどの原因となり、また、過剰労働が長く続くことで、虚血性心疾患、脳卒中やメタボリックシンドロームなどのリスクとなることが報告されている。近年のIT開発などの産業構造の変化から勤労者のメンタルヘルスの不調は増加しており、社会的に問題となっている。また、2015年12月からは、ストレスチェック制度が義務化。その勤労者の心理的な負担の把握は重要な課題となっている。
仕事ストレスの評価・調査方法としては、カラセックのJCQモデルが広く用いられてきた。JCQモデルでは、仕事ストレスが、仕事の要求度と裁量権、社会的サポートによって評価される。ただし、JCQ仕事ストレスは循環器疾患との関連性が指摘されていたが、その根底にあるメカニズムは不明であり、リスク評価として客観的な指標は存在しなかった。
うつ病や循環器疾患のリスクとなる仕事ストレスを評価への利用に期待
研究グループは、健康な378人の勤労者を対象に、JCQの仕事ストレス調査を行い、仕事ストレスと血管拡張性因子のひとつである一酸化窒素やその関連パラメータを比較。女性勤労者において、仕事ストレスが高くなると血清アルギナーゼ1が低下し、仕事のコントロール(裁量)や社会的サポートが高くなると、血清アルギナーゼ1は高くなること証明した。また、うつ病や循環器疾患のリスクとなる仕事ストレスを評価するためには、血清中のアルギナーゼ1が指標のひとつとなることも明らかになったという。
アルギナーゼ1は、主に肝臓に存在する可溶性タンパク質で、アルギニンを尿素に触媒する働きをもつ。血管拡張作用を持つ一酸化窒素と関係しており、血管内皮機能と関連があるタンパク質だ。
今回の研究によって、女性勤労者で、血清アルギナーゼ1は、仕事ストレスが高いほど低く、仕事の裁量や社会的サポートが多いほど高くなることを初めて見いだしたことになる。今回の研究成果により、今後、職場ストレスを客観的に評価するための手段として血清アルギナーゼ1が指標のひとつとなることが期待される、と研究グループは述べている。
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・岡山大学 プレスリリース