多くの全身性強皮症患者で初発症状として出現するレイノー現象
群馬大学は4月11日、レイノー現象や手指腫瘍をもつ全身性強皮症患者に対するB型ボツリヌス毒素局所注入療法が良好な治療効果を示したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科皮膚科学の石川治教授、茂木精一郎講師と同大学医学部附属病院臨床試験部の中村哲也教授、伊達佑生准教授のグループによるもの。研究成果は「Acta Dermato-Venereologica」に3月30日付けで掲載されている。
全身性強皮症は、皮膚および内臓の線維化、血管障害、免疫異常を特徴とする発症機序不明の全身性疾患。特定疾患に指定されており、国内では約3万人の患者がいるといわれている。レイノー現象とは、寒冷刺激や精神的ストレスによって手指の血流障害が起こり、手指の色調が白、紫、赤と変色する現象。多くの全身性強皮症患者で初発症状として出現し、長時間にわたって疼痛、痺れを来すために患者の日常生活に著しい影響を及ぼし、QOLの低下をもたらす。さらに血流障害が進行すると手指に潰瘍を生じるが、レイノー現象や手指潰瘍は治りにくく、感染を起こすと潰瘍が拡大し、指趾切断に至る可能性もあるため、有効な治療が切望されている。
近年、欧米からA型ボツリヌス毒素の局所注入によって症状が改善したという報告がされている。同研究グループも、レイノー現象をもつ10人の全身性強皮症患者に対してA型ボツリヌス毒素を手指基部に注入し、国内においてもレイノー現象に対するボツリヌス毒素の高い有効性・安全性を示している。
国内での適応拡大に向け、医師主導治験を進行中
今回、同研究グループは、レイノー現象や手指潰瘍をもつ45人の全身性強皮症患者を無投与群、およびB型ボツリヌス毒素を片手に250、1,000、2,000単位注入する4群に無作為化割り付けを行った。その結果、レイノースコアによるレイノー症状の重症度と痛みは、投与前と比較して投与4週間後では、1,000、2,000単位群において、無投与群、250単位群と比べて有意に改善。その効果は1回の注入で16週間持続して観察されたという。また、手指潰瘍は、無投与群と比べて、1,000、2,000単位群で著明な縮小・治癒がみられ、1,000、2,000単位群では、手指潰瘍の新生も有意に抑制されたとしている。
B型ボツリヌス毒素は、A型と比べ、値段が約6割と安く、また効果発現が早く自律神経に対する効果が高いことなどが知られている。研究グループは、今回の研究成果を発展させることで、痛みやしびれに困っている強皮症患者を救うことができる画期的な治療法になる可能性があるとして、国内での適応拡大へ向け、2016年12月より群馬大学医学部附属病院で医師主導治験としてランダム化二重盲検試験を開始している。
▼関連リンク
・群馬大学 プレスリリース