思春期遅発症の原因遺伝子として知られるPROKR2
国立成育医療研究センターは4月7日、思春期早発症患者においてPROKR2遺伝子変異を同定したと発表した。この研究は、同センター分子内分泌研究部の鈴木研究員、深見部長らのグループが、薬剤治療研究部の山内室長、浜松医科大学小児科の緒方教授らのグループと連携して行ったもの。研究成果は、「Journal of Cellular and Molecular Medicine」にて論文発表されている。
画像はリリースより
ヒトには約750のGタンパク共役型受容体(GPCR)があり、ホルモン分泌調節や感覚受容を含むさまざまな生体内機能に関与している。PROKR2は、GPCRの1つで、脳におけるホルモン分泌制御に関与している。PROKR2遺伝子は、思春期遅発症の原因遺伝子としてよく知られていた。
変異タンパクが正常タンパクの機能を亢進
今回同定された変異タンパクはシグナル伝達能を喪失していたが、同じ細胞内に存在する正常なPROKR2タンパクの機能を高める作用があることが見出されたという。患者は正常なPROKR2と変異のあるPROKR2の両方を持っていたことから、変異タンパクが正常タンパクの機能亢進を介して過剰ホルモン分泌を招いたと考えられる。
思春期早発症患者の中には原因不明の人も多く、このような患者の発症原因の一部にはPROKR2変異があると推測される。今回の情報は、思春期早発症患者の診療に役立つものと期待される。
また、これまでGPCRの機能亢進を招く変異はごく少数しか知られておらず、これらはすべて異常なシグナル伝達能を有するタンパクを作るものだった。今回同定されたPROKR2変異と同様の奇異性機能亢進メカニズムは、他のGPCR遺伝子にも生じると推測される。したがって、今回の成果はGPCR機能亢進に起因する新たなヒト疾患の解明につながる可能性がある、と同研究グループは述べている。
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・国立成育医療研究センター プレスリリース