■道薬大、慶大グループ調査
一般市民を対象に、院内処方と院外処方のどちらがいいかを聞いたところ、約7割が「院内処方がいい」と考えていることが、北海道薬科大学と慶應義塾大学薬学部の調査によって明らかになった。ただ、定期的に受診し、いつも院外薬局で薬を受け取っている市民に限定すると「院外処方がいい」と回答した割合は4割強に高まった。医薬分業への否定的なイメージが先行する中、院外処方の体験を通じて否定的な見解が和らぐことが示唆される結果となった。
調査は、北海道薬大薬事管理学教授の櫻井秀彦氏、慶應義塾大学薬学部名誉教授の福島紀子氏らの研究グループが2016年9月に、インターネットを活用して実施した。人口動態に基づいて地域、年齢、年代を割り付けた20~89歳の男女のうち、医療従事者を除外した2006人を対象に、院外処方に関する考えや負担感などを聞いた。回答者のうち定期的な受診者は831人(41.4%)、定期受診未経験者は689人(34.3%)、それ以外の層は486人(24.2%)という構成だった。
院外処方の賛否について聞いたところ「院内処方がいい」は70.8%、「院外処方がいい」は29.2%となり、約7割が院内処方を支持していた。
ただ、実際に定期的に受診している群に限定すると「院外処方がいい」は32.1%に増加。さらに、定期受診群のうち「いつも院外薬局で受け取っている」408人では「院外処方がいい」と回答した割合は42.2%に高まった。「院外薬局で受け取ることが多い」185人でも、33.0%が「院外処方がいい」と回答した。
いずれの群においても過半数は院内処方を支持しているものの、実際に受診していたり、院外で薬を受け取ったりしている群においては、院外処方を支持する割合が高くなっていた。
研究グループは「全体として院外処方賛成の割合が低くなっているのは、院外薬局を利用したことがない者や、定期的に薬局を利用していない人の意見が反映されているためと考えられる」と指摘。「実際に薬局を利用していない人は、院外薬局に対してネガティブなイメージを抱く傾向にあり、全体としての院外処方に対する評価を下げている可能性が考えられた」としている。
一方、院外処方に対する負担感について聞いたところ「負担ない」は38.7%、「負担ある」は33.3%となり、回答は拮抗していた。定期受診群に限定すると「負担ない」と回答した割合は43.8%に増え、「負担ある」との回答(27.4%)を大きく上回った。
さらに、定期受診群のうち「いつも院外薬局で受け取っている」408人と「院外薬局で受け取ることが多い」185人を対象に負担感について解析したところ、293人(49.4%)が「負担ない」と回答し、「負担ある」と回答した120人(20.2%)を大きく上回った。
この結果から、定期受診し薬局を利用している患者の約半数は、院外処方を負担とは思っていないことが分かった。実際に「負担ない」と回答した293人のうち63.5%は院外処方を支持していた。一方、薬局への移動や薬局でのやりとりなどを「負担ある」と感じている120人では、91%が「院内処方がいい」と回答していた。
研究グループは「負担感が院外処方の賛否に影響していた。負担を感じていない人は半数以上が院外処方を希望しており、薬局のメリットを感じていると推測された」と分析している。