■中止命令、罰則規定も盛る
臨床研究の実施手続きや製薬企業から受けた資金提供について契約締結や公表を義務づける「臨床研究法」が7日、参議院本会議において全会一致で可決、成立した。未承認薬や製薬企業から資金提供を受けて実施される臨床研究を「特定臨床研究」と位置づけ、これらにモニタリングや監査を義務づけるほか、実施基準に違反した場合は厚生労働大臣による中止命令、3年以下の懲役か30万円以下の罰金の罰則規定を設けた。国会審議で指摘が相次いだ被験者保護の規定については、附帯決議で今後省令で定める臨床研究実施基準等で明確に規定することとされた。
臨床研究法は、臨床試験の実施に関する手続きと製薬企業などが講じるべき措置を柱に構成。そのうち、未承認薬等の臨床研究、製薬企業から資金提供を受けて実施される医薬品の臨床研究を「特定臨床研究」と位置づけ、これら特定研究を実施する研究者に対し、実施計画を国の認定臨床研究審査委員会の意見を聞いた上で厚労大臣に提出することを義務づけた。
また、研究者に対してモニタリングや監査の実施などの実施基準を遵守すること、臨床研究に起因すると疑われる重篤な疾患が発生した場合も認定臨床研究審査委員会に報告して意見を聞き、厚労大臣に報告することを義務づけた。
実施基準違反があった場合、厚労大臣が改善命令を行い、これに従わなければ、特定臨床研究の中止命令等の措置を講じたり、3年以下の懲役か30万円以下の罰金が科せられる罰則規定を設ける。臨床研究の実施計画に虚偽の記載をした場合なども50万円以下の罰金を科す。
一方、製薬企業に対しては、資金提供している医薬品の臨床研究について、毎年度の状況を公表すると共に、契約を締結して実施することも義務づける。資金提供の公表範囲は、臨床研究費、自社製品の研究責任者が所属する機関への寄付金、原稿執筆料・講師謝金等については義務づけ、これに違反した場合は指導・助言、勧告を行い、勧告に従わない場合は企業名を公表する。
特定臨床研究の実施に当たっては、臨床研究法を遵守する義務が生じる。既承認薬を用いた製造販売後の臨床研究や製薬企業から資金提供を受けていない臨床研究、手技などに関する臨床研究を行う場合も法律を遵守することを努力義務とした。
採決に当たっては、臨床研究法の施行に当たり、国際人権規約の規定の趣旨を尊重し、被験者保護に万全を期すことや実施基準で被験者の権利尊重を明確に規定することなどを求める附帯決議を採択している。
3月17日の衆院厚生労働委員会、6日の参院厚生労働委員会では、委員から被験者の人権保護、権利規定を明確化するよう求める声が相次いだ。そのため附帯決議では、国際人権規約の規定の趣旨を尊重し、被験者保護に万全を期すことや実施基準等で被験者の権利尊重を明確に規定することを求めると共に、臨床研究法の対象とならない手術、手技等の臨床研究対象者を含め尊厳、権利を保護する対応の検討を求めた。
また、治験と臨床研究の制度区分と活用方法を明確化すると共に、承認申請資料として臨床研究データを活用できる仕組みを検討すること、実施基準で臨床研究の概要、進捗状況、結果を公的データベースに登録する旨を規定し、臨床研究の結果を含む情報登録、公開要件等の拡充について検討すること、臨床研究法の公表対象外とされている情報提供関連費や接遇費等を公表対象とするよう検討することなどを求めた。