■16年度薬学教育評価-国試偏重、予備校関与も指摘
薬学教育評価機構は、2016年度の6年制薬学教育評価を専門分野別に行った結果をまとめた。昨年度の対象となった大阪薬科大学、金沢大学、慶應義塾大学、神戸学院大学、神戸薬科大学、静岡県立大学、新潟薬科大学、星薬科大学、北海道医療大学、武庫川女子大学、姫路獨協大学の11校のうち、10大学は評価基準に適合と認定されたが、姫路獨協大は評価基準の中項目5項目に重大な問題点が認められるとして、総合判定を保留した。ただ、適合と認定された複数の大学に対しても、国家試験偏重の時間割や卒業研究の単位認定に不適切な履修規定があるなどの問題点を指摘。早急に適切な改善措置を講じるよう求めた。認定期間は2024年3月31日まで。
今回、昨年度の評価対象となった11校の薬学教育プログラムについて評価を行った結果、姫路獨協大を除く10校は適合と認定された。
姫路獨協大は、中項目5項目に重大な問題点が認められるとして、総合判定が保留となり、再評価を受けることになった。
姫路獨協大の評価で、重大な問題点が認められると判定されたのは、▽カリキュラム編成▽問題解決能力の醸成のための教育▽成績評価・進級・学士課程修了認定▽教員組織・職員組織▽自己点検・評価――の5項目。
評価結果では、カリキュラムが薬学共用試験と薬剤師国試の合格対策に偏っているほか、6年次の講義が国家試験受験予備校に依頼して実施されている問題点が指摘された。
具体的には、国試対策の科目が6年次前期に充てられていることで卒業研究の実施期間が圧迫され、6年次の講義が国試受験予備校に依頼して実施されていることが問題とした。また、現行カリキュラムで教育内容が階層的な順序と一致していない科目配置がある、6年次で専門分野の選択科目を全く履修しなくても卒業できる、在学中に卒業要件単位数を変更していることなどを問題視。「6年一貫教育の再構築が必要」と教育内容の根本的な改善を求めた。
さらに、留年率と退学率が恒常的に高いことや6年次後期の「卒業研究II」の試験が実質的な卒業要件となっており、その合否判定が国試受験予備校による模試結果を考慮してなされている不適正な卒業判定が行われていること、教員数が大学設置基準を満たしていないことなど、「多くの問題を改善することなく抱え続けている」と厳しく指摘。その他にも多数の問題点が指摘され、総合判定は保留となった。
■適合認定校にも不適切な履修規定
一方、適合と認定された神戸学院大に対しても、4年次の「薬学総合科目II」の成績評価を、薬学共用試験結果を含め判定していることが不適切とし、早急な改善を求めると共に、4年次と6年次で共用試験、国試の対策講義に多くの時間が充てられ、共用試験、国試偏重教育になっていると指摘。カリキュラム見直しを求めた。さらに「薬学総合科目I」の講義を国試予備校の講師が担当し、成績評価に模擬試験を用いていることを不適切とした。
神戸薬大に対しても6年次必修科目の「薬学演習」と卒業延期学生の卒業認定に関わる正規教育に予備校講師が大きく関与していることを問題点として指摘している。
新潟薬大でも、国試偏重教育の改善を求めると共に、毎年1年次の退学者と留年者が合計20~30人である現状を指摘。補完教育によっても必要な基礎学力に到達できない学生を入学させている可能性が高いと断じ、入試制度の改善を求めた。
北海道医療大には、国試偏重教育の改善と共に、卒業研究に相当する必修科目「総合薬学研究」の単位要件に、研究内容と関係のない卒業試験の合格を含めている履修規程は不適切と指摘。早急に適切な改善措置を講じ、対応状況に関する報告書提出を要請した。
武庫川女子大は、4年次の必修科目の単位認定に薬学共用試験の合否を条件にする制度、「卒業研究II」に実質的な卒業試験とされる試験で学士修了認定要件とする制度が不適切とし、早急な改善措置を講じ、対応状況に関する報告書の提出を要請した。また13年度以降の休学者、留年者、退学者数が増加している事実を指摘。入学者選抜で基礎学力が担保されていないことを示しており、改善が必要とした。
静岡県立大にも、実務事前実習のシラバスに共用試験OSCEの結果を単位認定に用いるとの記載があることが不適切とし、改善を求めた。