2型糖尿病合併の有無の関わらず慢性心不全の患者が対象
ドイツのベーリンガーインゲルハイム社は3月17日、米国のイーライリリー社と共同でEMPEROR HFプログラムを開始したと発表した。EMPEROR HFプログラムは2つの第3相アウトカム試験で構成されており、「ジャディアンス(R)」(一般名:エンパグリフロジン)の慢性心不全患者に対する治療効果について検討する。
ジャディアンスは、1日1回経口投与のSGLT2阻害薬。心血管死のリスク減少に関するデータが複数の国の添付文書に記載された初めての2型糖尿病治療薬だ。EMPA-REG OUTCOME(R)試験では、心血管疾患を有する2型糖尿病患者に対し、他の糖尿病治療薬および心血管治療薬などの標準治療に同剤を上乗せして投与したところ、プラセボと比較して心血管死のリスクを38%減少させたことが示されている。また、この試験の副次評価項目のひとつであった、この患者集団における心不全による入院リスクについても、ジャディアンスの投与によって35%減少することが示されているという。
EMPEROR HFプログラムでは約7,000人の患者が登録
今回開始されたEMPEROR HFプログラムは、現在心不全の標準治療を受けている糖尿病合併または非合併の慢性心不全患者を対象に、エンパグリフロジンの1日1回投与による治療をプラセボと比較検討するもの。同試験は、駆出率が保持された慢性心不全(HFpEF)患者と駆出率が低下した慢性心不全(HFrEF)患者で安全性と有効性を評価する、EMPEROR HF-Preserved試験とEMPEROR HF-Reduced試験の2つの第3相無作為化二重盲検試験で構成される。どちらの試験においても心血管死および心不全による入院を主要評価項目とし、エンパグリフロジンによる治療の影響を評価。これら2つの試験には合計約7,000例の患者が参加し、2020年に完了する予定という。
心不全患者は現在、世界中で約2,600万人。罹患率および死亡率が著しく高いことから、治療ニーズの高い疾患だ。米国と欧州における主な入院原因でもあり、年間100万人以上が一次診断で心不全と診断されて入院している。心不全で入院した後、60~90日以内の再入院率は30%に達しており、心不全と診断された患者の約50%が5年以内に死亡する。心不全は糖尿病患者で大変多く見られるが、心不全患者全体の約半分は糖尿病を罹患していない。