■「どんな人でも同意は違う」
中央社会保険医療協議会は29日に総会を開き、2018年度調剤報酬改定に向けた議論をスタートさせた。焦点の一つは16年度改定で新設された「かかりつけ薬剤師指導料」の効果で、支払側委員からは「現場の動きと報酬の目的が乖離している。薬剤師がどんな患者でも同意を取る構図は違うのではないか」と要件見直しを求める声が上がり、薬剤師委員も「一定の歯止めが必要」と同意。算定要件のあり方を見直す必要性で一致した。医師委員も、大手薬局チェーンの指導料件数が激増している状況を指摘。「地域薬局を守るはずの改定が裏目に出ている」と問題意識を示した。
18年度改定では、患者本位の医薬分業を実現するため、対人業務への転換を促す調剤報酬のあり方を引き続き検討することになっている。この日の総会では、16年度改定の目玉となった「かかりつけ薬剤師指導料」の影響を中心に議論が行われた。
厚生労働省によると、かかりつけ薬剤師指導料・かかりつけ薬剤師包括管理料の施設基準を届け出た薬局は2月時点で50.7%に上った。薬剤師代表の安部好弘委員(日本薬剤師会常務理事)は「施設基準の届出は、かかりつけ薬剤師指導料を患者に提案できるスタートラインに立てるとの位置づけ」とし、「かかりつけ薬剤師が必要な独居の高齢者や服薬アドヒアランスを維持できない人などに勧めて、同意をもらい、初めて報酬が発生するものであり、急にかかりつけ薬剤師が増えるのは不自然」と述べた。
その上で、「25年に向けて、実際のかかりつけ機能を高めて、必要な人にかかりつけ薬剤師の制度を使っていただけるよう丁寧に育てていく必要がある」と訴えた。また、敷地内薬局についても言及。「門前から地域へというビジョンと真逆の流れ。調剤報酬の中で、かかりつけ機能を持たない敷地内薬局がどうあるべきか議論してほしい」と対応を要請した。
診療側の中川俊男委員(日本医師会副会長)は、16年度改定で大手チェーン薬局をターゲットに報酬を適正化したにもかかわらずかかりつけ薬剤師指導料の算定件数を大幅に増やしている大手チェーン薬局の動向を問題視。「地域で頑張っている薬局を守り、大手チェーン薬局の行き過ぎた営利主義を是正しようとの狙いが裏目に出ている。由々しき問題だ」と訴え、かかりつけ薬剤師指導料の算定要件に問題意識を示した。
支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、「かかりつけ薬剤師の対象は本来、高齢者や認知症の疑いがあったり、多剤投薬されている人など、薬を一元管理しにくい人だったはずだが、現場では指導料を取りに行くような状況がある」と指摘。「薬剤師が患者に同意をもらうという構図は違うのではないか」と問題提起した。
その上で、「患者からかかりつけ薬剤師になってほしいと頼まれた人になってほしいし、たまにかぜをひいて薬局に来た患者から同意を取るようなことはあってはならない」と強調。算定要件のあり方を見直すべきとの考えを示した。
安部委員も「一定の歯止めをかける必要がある」と要件見直しに同意を示すと共に、「かかりつけ薬剤師制度を正しく使って結果を出していかなければ、制度がなくなってしまうことになりかねない」と危機感を示した。