PAF産生のループが神経因性疼痛の悪化・持続に関与
国立がん研究センターは3月28日、血小板活性化因子(PAF)生合成遮断により、未解決な神経因性疼痛を緩和できるという研究結果を発表した。この研究は、同センターと、国立国際医療研究センター、東京大学、理化学研究所の共同研究によるもの。研究成果は、「FASEB Journal」オンライン版に掲載された。
画像はリリースより
神経因性疼痛は糖尿病やがんに伴っても発生する。現在、鎮痛薬としては、アスピリン等の非ステロイド系鎮痛薬やオピオイドなどの医療用麻薬があるが、これらでは解決できない神経因性疼痛があり、これに対する決定的な鎮痛薬は存在しない。近年、神経因性疼痛の分子メカニズム研究が進展し、神経因性疼痛の発症や持続の関連分子として、アデノシン三リン酸(ATP)やPAFが報告されてきた。
ループを遮断する薬剤が新規カテゴリーの鎮痛薬に
今回、研究グループは、PAFを生合成できない、リゾホスファチジルコリンアシル転移酵素2(LPCAT2)欠損マウスを作製。このモデルで坐骨神経部分を損傷させた神経因性疼痛モデルを作成、疼痛解析を行ったところ、マウス脊髄中のPAFはほとんど検出されず、神経因性疼痛症状であるアロデニアはほぼ発症しなかったという。
さらに、作製した神経因性疼痛モデルでは、脊髄後角のミクログリアが増加し、ミクログリアにはLPCAT2が発現していることを確認。PAFはリン脂質メディエーターであり、細胞外刺激により急激に産生されその分解も調節を受ける。細胞をPAFで刺激してもPAFが産生されることから、PAFがPAFを作るというPAF産生ループが存在し、そのために神経因性疼痛を悪化または持続させているのではないかと推測したという。そこでPAFの刺激をブロックするPAF受容体拮抗剤でマウスマクロファージを処理し、PAF産生を誘導するATPで刺激したところ、刺激後5分程度でATPによるPAF産生はピークに達したものの、刺激後10分程度ではPAF産生の低下が認められた。これはPAF産生にループがあることを示唆しているという。
研究グループは、これらの結果から「PAF Pain Loop」の存在を推測。このループを遮断する薬剤は、非ステロイド系鎮痛薬やオピオイド以外の新規カテゴリーの鎮痛薬になり得ると考えられるという。LPCAT2阻害剤の新規開発や、既に開発済みの多くのPAF受容体拮抗薬を改めて鎮痛薬として見直すことが、新規鎮痛薬開発へとつながるとしている。
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・国立がん研究センター プレスリリース