若い女性に多い遺伝性不整脈疾患、妊娠・出産も誘因に
国立循環器病研究センターは3月29日、QT延長症候群(LQTS)の女性患者の妊娠・出産における致死的不整脈の発生頻度と、LQTSの代表的な治療薬であるβ遮断薬の有効性および胎児への安全性についての検証結果を発表した。この研究は、同センター不整脈科の石橋耕平医師、相庭武司医長、草野研吾部長、周産期・婦人科の神谷千津子医師、吉松淳部長、小児循環器科の宮崎文医師、坂口平馬医師、白石公教育推進部長ほか全国の医療機関による多施設合同研究チームによるもの。研究成果は英国の専門誌「Heart」オンライン版に掲載された。
LQTSは遺伝性不整脈疾患のひとつで、重症例では失神や突然死の恐れがある。患者は約1,000人に一人の割合で認められ、運動やストレスが誘因となる。特に思春期以後の若い女性に発作が多く、妊娠・出産も誘因のひとつといわれている。LQTSの治療にはβ遮断剤が広く用いられ、出産時の事故抑制の観点からは妊娠期間中も継続的な服薬が望まれるが、妊娠中の薬物治療による胎児への懸念から服薬を中断するケースもあり、積極的な薬物療法の是非を検証する必要があったという。
β遮断剤の胎児への影響について解析
研究チームは、全国における2000~2016年のLQTS患者79名の妊娠136件を解析し、β遮断剤を使用した例49件と未使用例の94件における妊娠中の心電図変化、妊娠・出産後の不整脈発生の頻度、およびβ遮断薬の胎児への影響について後ろ向きに調査・解析を実施した。
その結果、LQTS妊産婦の致死性不整脈の発生はLQT2型に多く、そのほとんどがβ遮断薬未使用例だった。一方、β遮断薬使用例では帝王切開を選択する場合が多く、妊娠週数が1~2週短いため低体重の胎児が多かったが、その後の発育に問題はなく、また流産や胎児の先天的な異常の頻度もβ遮断薬を使用しない場合と比べ差がなかったという。
LQTSは稀な疾患ではないため、致死性不整脈による心事故を防ぐためには、早期診断が必要だ。さらにハイリスク患者に対しては、妊娠中でもβ遮断剤の継続が推奨される。研究グループは、この後ろ向き調査で、妊娠時に既にLQTSと診断されβ遮断剤を服用していた患者とそうでない患者で重症度など臨床背景が大きく異なることも考慮し、今後さらに症例を増やして検証を続ける必要があるとしている。
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・国立循環器病研究センター プレスリリース