硝酸塩/亜硝酸塩不足がメタボや心臓突然死を引き起こす
琉球大学は3月27日、マウスに硝酸塩/亜硝酸塩が不足した食餌を長期にわたり食べさせると、たとえ食べ過ぎやカロリーの摂り過ぎがなくても代謝症候群(メタボリックシンドローム)を発症し、心臓病を併発して早死することを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科薬理学の筒井正人教授、喜名美香大学院生、坂梨まゆ子助教らの研究グループによるもの。
画像はリリースより
メタボリックシンドロームは、心筋梗塞や脳卒中、2型糖尿病、心血管死、総死亡のリスクを増加させる。メタボリックシンドロームの成因には、食事からのカロリー過剰摂取、運動不足、遺伝、加齢などの関与が報告されているが、その詳細な機序は未だ十分に解明されていない。一方、硝酸塩/亜硝酸塩は、これまで単なる一酸化窒素(NO)の代謝産物としての認識しかなかったが、最近になって硝酸塩が還元反応により亜硝酸塩に、次いでNOに変換されるというNOの代謝と逆の経路が発見され、硝酸塩/亜硝酸塩におけるNO供与体としての新しい役割が注目されている。
硝酸塩/亜硝酸塩不足はアディポネクチン低下などと有意に関連
硝酸塩は、レタスやほうれん草などの緑葉野菜に多く含有されている。研究グループは食事中の硝酸塩/亜硝酸塩の長期不足がメタボリックシンドロームを引き起こすという仮説をマウスにおいて検証した。その結果、低硝酸塩/亜硝酸塩食を3か月投与したマウスでは、有意な内臓脂肪蓄積、高脂血症、耐糖能異常が引き起こされ、18か月投与したマウスは、有意な体重増加、高血圧、インスリン抵抗性、内皮機能不全を招いた。さらに低硝酸塩/亜硝酸塩食を22か月投与したマウスでは、急性心筋梗塞死を含む有意な心血管死が誘発された。これらの異常はすべて硝酸ナトリウムの同時投与により抑制されたという。
これらの異常は、内皮型NO合成酵素発現の低下、アディポネクチンの低下、並びに腸内細菌叢の異常と有意に関連しており、これらの機序によってマウスにメタボリックシンドローム、血管内皮機能不全、および心血管死が引き起こされることが明らかとなった。
近年、メタボリックシンドロームの有病率が全国1位、急性心筋梗塞の有病率も全国トップレベルなど沖縄県民の健康レベルは危機的状況にある。研究グループはこれらの結果を元に、野菜の摂取を明確な科学的エビデンスを根拠として、沖縄県民に広く推奨し、健康長寿の復活に繋がることが期待されると述べている。
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