■削減効果は年1300万円
薬剤師レジデントが医師の外来診察に同席して処方提案等の臨床業務を行った効果を検討したところ、3カ月間で337万円の薬剤費削減効果が得られたことが、国立がん研究センター東病院薬剤部の研究で明らかになった。薬剤師レジデントの時給と外来診察に同席した労働時間から人件費の2.2倍の効果が得られ、これを1年間続けて実施したと仮定すると、年間1300万円の薬剤費削減効果が期待できることが推定された。これまで薬剤師の外来同席業務の効果については明らかになっていなかったが、薬剤費削減効果のエビデンスが得られたことで、薬剤師の外来業務に弾みがつきそうだ。
米国では医師の外来診察に薬剤師が関与し、臨床業務を行っている。日本では2007年に、国立がん研究センター東病院薬剤部が初めて医師の外来診察に薬剤師が同席する業務を開始。現在、薬剤師レジデント3年目の研修の一環として外来診察同席業務を行っている。
外来診察同席業務は、診察前、診察中、診察後の時点で介入を実施。診察前は採血結果が出る前に待合室で患者の症状やアドヒアランス、残薬を確認して医師に情報提供し、診察中には診察室で医師の説明内容や治療方針を共有したり、処方設計を支援する。
さらに、診察後は待合室や通院治療センターで治療の理解度確認や服薬指導、質問への対応などを行っている。必ず3点で介入するのではなく、医師の希望する方法で患者に応じて柔軟に対応している。ただ、外来診察同席業務は、新規性の高い取り組みではあるものの、その有益性は明らかになっていなかった。
そこで、同センター薬剤部では、薬剤師レジデント課程3年目に実践している外来同席による薬剤費削減効果を明らかにするため、昨年6月6日~8月31日までの61日間で薬剤師レジデント6人が介入した患者を対象に調査を行った。抗癌剤S-1製剤の減量開始を提案し、本来処方されるはずだった薬剤と差し引いた金額など、カルテから前後の経過を確認し、削減された薬剤費を算出した。
その結果、61日間で薬剤師レジデントが外来同席に従事した時間は1034時間、対象患者数は4582人、介入した患者は2508人だった。処方提案が行われたのは456件、そのうち薬剤費に関わる提案136件、最終的に採用された提案は119件と採用割合は88%に上った。
介入した理由についてみると、残薬調整が59%と最も多く、次いで中止提案が26%と、これら残薬調整と中止提案が8割以上を占めた。処方提案によって削減された薬剤は、抗癌剤以外の定期内服薬が69%と7割を占め、抗癌剤が14.6%、支持療法薬が0.4%などとなった。3カ月間で削減された薬剤費は336万8224円となり、そのうち抗癌剤が299万3151円とほとんどを占めた。
時給1490円の薬剤師レジデントが外来同席に従事した1034時間の労働時間から人件費を算出したところ、154万0660円となった。これを削減された薬剤費336万8224円と比較すると、薬剤師レジデントにかかった費用の2.2倍の薬剤費削減効果が得られたことが明らかになった。さらに、薬剤師レジデントが外来診察同席業務を1年間続けたと仮定すると、年間1300万円の薬剤費を削減できることが考えられた。同センター薬剤部では、「外来診察同席業務は薬剤費の削減に貢献しており、医療経済的に有益」としている。