遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)のひとつ
アストラゼネカ株式会社は3月24日、現在開発中のポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害剤「Olaparib」(オラパリブ)が、「BRCA遺伝子変異陽性の卵巣がん」を予定される効能・効果として、厚生労働大臣より希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)の指定を受けたと発表した。
卵巣がんは、日本では毎年約9,000人が罹患しており、2014年の患者数はおよそ26,000人と報告されている。このうち、代表的ながん抑制遺伝子として知られるBRCA1および/またはBRCA2遺伝子の病的変異を伴う遺伝性のBRCA遺伝子変異陽性卵巣がんは、推定患者数3,500人未満と極めて稀であるものの、散発性の卵巣がんとは異なる病態的特性を持ち、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)という確立された疾患概念の一部として認識されている。しかし、BRCA遺伝子変異陽性の卵巣がんに対する、その分子生物学上の特性を考慮した治療薬剤は、日本ではまだ承認されていない。
卵巣がんは標準的治療法である化学療法がよく奏効するが、しばらくすると再発することが多く、再び化学療法を実施することになる。白金製剤を含む化学療法は、主な副作用として悪心・嘔吐、好中球減少症・血小板減少症・貧血などの骨髄毒性、脱毛、しびれといった神経毒性などが認められるため、化学療法を繰り返すことによるQOLの低下は、患者の治療満足度の観点からも課題とされている。
BRCA遺伝子変異陽性の卵巣がん患者のニーズを満たす新たな薬剤に
オラパリブは、革新的なファースト・イン・クラスのPARP阻害剤。DNA損傷応答(DDR)経路に異常をきたしたがん細胞に特異的に作用し、細胞死を誘導するという。
アストラゼネカは、今年3月14日に、生殖細胞系列のBRCA(gBRCA)遺伝子変異陽性プラチナ製剤感受性再発卵巣がん患者を対象にオラパリブ錠(300mg 1日2回投与)の維持療法をプラセボとの比較で評価した国際共同第3相臨床試験(SOLO-2試験)において、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)の大幅な延長が示されたとの結果を発表(ハザード比0.30;95%信頼性区間0.22-0.41;p<0.0001;中央値19.1か月対5.5か月)。また、安全性については、過去の試験と概ね一貫した安全性プロファイルを示したと報告している。このため、オラパリブは化学療法終了後の維持療法として、病勢進行を遅らせ、化学療法による再治療が必要となるまでの期間を延長させることが期待されているという。
今回の同剤に対する希少疾病用医薬品指定を受け、同社は一日も早い承認取得を目指し努力していきたいと述べている。
▼関連リンク
・アストラゼネカ株式会社 プレスリリース