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肝臓発生に、必須アミノ酸バリンの代謝が重要な役割を果たすことを特定-横浜市大

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2017年03月27日 PM12:15

標的細胞のみを安価かつ効率的に得る方法の確立を目指し

横浜市立大学は3月23日、網羅的な遺伝子発現・代謝物発現解析により、マウス肝臓の胎内発生初期段階において、分岐鎖アミノ酸、特にバリンの代謝がその成長に重要であることを世界で初めて特定したと発表した。この研究は、同大学学術院医学群臓器再生医学の武部貴則准教授、小池博之研究員、谷口英樹教授ら研究グループによるもの。研究成果は、英科学誌「Development」に掲載された。


画像はリリースより

近年、iPS細胞などの多能性幹細胞を分化誘導することにより、創薬スクリーニングや再生医療に有益なヒト細胞や組織を創出する方法が注目されている。一般に多能性幹細胞の培養系では、サイトカインを始めとしたさまざまなタンパク質製剤などの試薬を大量添加することによる各種機能細胞への分化誘導が試みられているが、これらの試薬が極めて高額であるために、医療応用に要する莫大な数の細胞を得るためには巨額の製造コストを要することが重大な課題となっていた。

研究グループはこれまでに、器官の原基が胎内で形成される過程を模倣する新規の細胞培養操作技術を開発し、試験管内においてヒトiPS細胞から立体的な肝臓の原基であるミニ肝臓を自律的に誘導できることを示していた。今回は、胎内で肝臓が発生するミニ肝臓の形成時期において、成長が活発な時期に特徴的な細胞の代謝特性に着目。ミニ肝臓発生期における細胞の代謝がどのようになっているときに増殖が活発化しているのか、そのメカニズムを解明することで、培養細胞の増殖迅速化に活用しようと考えたという。

ミニ肝臓を安価に大量創出する技術への応用に期待

研究グループは、異なる分化段階の細胞における代謝特性の差異の検出を目的として、胎生初期から成体に至るまでの肝臓を対象にメタボローム解析・トランスクリプトーム解析を行った。その結果、未分化な細胞が高頻度に存在する胎生初期(E9.5~11.5)の肝臓で特異的に、分岐鎖アミノ酸の分解酵素であるアミノ基転移酵素(BCAT1)が高発現し、分岐鎖アミノ酸の分解が亢進していることを見出したという。また、BCAT1が高発現する傾向は、ヒトにおいても同様であることを確認。細胞増殖が活発な胎生初期の肝臓細胞では、分岐鎖アミノ酸の代謝要求度が著しく高いことが示唆されたという。

そこで、発生初期の胎児肝臓形成に対する分岐鎖アミノ酸の効果を検証するため、分岐鎖アミノ酸非含有飼料を作製し、その投与による影響を評価。肝発生が始まる妊娠8.5日目の母体マウスに分岐鎖アミノ酸非含有飼料を与えて飼育した結果、この飼料を与えた群の胎児肝臓においては、標準餌群と比較して肝重量が著しく減少した。さらに、胎児肝臓中に含まれる肝前駆細胞の存在頻度をフローサイトメトリーにより解析したところ、標準餌群に比べて、分岐鎖アミノ酸非含有飼料、およびL-バリン非含有飼料を与えた群ではその存在頻度が大きく減少。発生初期の肝形成過程で肝臓の前駆細胞が活発に増殖する時期においては、分岐鎖アミノ酸、特にバリンの存在が重要であることが示されたという。

この知見をヒトiPS細胞の培養に応用すると、最適な濃度のバリンを培養液に添加するとヒトiPS由来肝臓細胞の増殖性が亢進すること、また、継代培養したヒト肝臓細胞を用いてミニ肝臓形成が可能になる。同研究成果により、分岐鎖アミノ酸濃度を最適化した培養液を用いることで、iPS細胞などに由来する肝臓細胞の安価かつ効率的な創出が可能になると考えられる。これにより、再生医療の実用化を阻む大きな課題であった巨額の製造コストの低減につながり、・創薬研究の促進が期待される。

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