MBAを取得したのは、岐阜薬大大学院博士課程3年の井上雄有輝さん(27)と、サプリメントメーカーのわかさ生活から同大学院に研究生として出向中の大江絵美さん(31)の2人。
井上さんの修士論文の研究テーマは「アカデミア発創薬に向けて」。研究室のシーズを新薬として開発・上市するための戦略を経営学的な観点から明らかにし、ゴール達成のために必要な事項について分析を行った。
また、大江さんの研究テーマは「新たな時代に向けたブランディング戦略研究」。超高齢化社会を迎える日本で伸長が予想されるサプリメント市場において、今後、消費者に受け入れられるブランドイメージの一つのモデルを明らかにした。
井上さんは、「最初は薬学以外の全く違う分野という慣れない環境で大変だったが、コースで一緒に学んだ同期の社会人からいろいろ教えてもらう中で、新たな視点を身につけることができた」と実感を語る。大江さんは、「企業で4年ほど働いて大学に出向しているが、所属組織や会社内だけではなく、ビジネスの場では無限の考え方があり、多種多様な見方や考え方を得ることができた大きな機会になった」と手応えを話している。
岐阜薬大は、グローバルな視野に立ち、製薬企業などで研究開発や経営をリードする専門的な人材輩出を目指し、薬学博士号とMBAを持った学生を育成するため、2014年1月に中京大学大学院ビジネスイノベーション研究科と連携協定を締結。両大学の大学院でカリキュラムを履修できるよう連携を開始し、15年度から井上さんと大江さんの2人が中京大大学院のビジネススクールに入学していた。
このほど両名がビジネススクールの課程を修了し、岐阜薬大の大学院に在籍しながら19日付でMBAの学位を取得した。
今後、井上さんと大江さんは薬学博士号の取得を目指し、引き続き研究を続ける。薬学博士号を取得すれば、薬学博士とMBAの複数学位を取得した初めての人材が輩出されることになる。
岐阜薬大の稲垣隆司学長は、「薬学の中でMBAを取得するのは、単なる研究者ではないということ。異分野の方と交流でき、いろいろな考え方が身についたことは大きい」と複数学位取得制度の成果を強調。「必ずいろいろな分野で活躍できる人材になってくれると思っている」と期待感を述べ、今後も意欲ある学生に様々なチャンスを与えていく考えを示した。
ただ、中京大大学院のビジネススクールは、17年度からの学生募集中止を決定している。現時点で複数学位取得制度の継続は困難な状況となっており、稲垣氏は「ぜひ今後も進めていきたいと考えている。東海地方の他大学と何らかの提携ができないか模索していきたい」との方針を述べた。