特発性肺線維症に対する治療薬「ピルフェニドン」
東京医科歯科大学は3月16日、既存の薬剤であるピルフェニドンがマウスの非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を著しく抑制すると発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究 科分子内分泌代謝学分野および九州大学大学院医学研究院病態制御内科学分野(第三内科)の小川佳宏教授、東京医科歯科大学医学部附属病院の土屋恭一郎助教らの研究グループが、名古屋大学、国立成育医療研究センターと共同で行ったもの。研究成果は、国際科学誌「Scientific Reports」オンライン版に3月17日付で掲載されている。
画像はリリースより
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)はメタボリックシンドロームの肝臓における表現型と考えられており、最も進行性のNASHは肝臓の炎症や線維化を伴ってしばしば肝硬変症や肝細胞がんを発症するため治療介入が必要である。しかし、NASHの発症機構には不明な点が多く、NASHに対する確立された治療法がないことが大きな問題となっている。
ピルフェニドンは、特発性肺線維症に対する治療薬として、既に臨床の現場において使用されている。しかしながら、抗線維化作用の分子機構は明らかでなく、NASHに対する有効性も不明だった。そこで今回、同研究グループが独自に開発したNASHモデルマウスを用いてピルフェニドンの治療効果を検討し、NASH治療薬としての可能性を検証した。
肝臓の炎症所見と線維化を著しく抑制
その結果、NASHモデルマウスにピルフェニドンを経口的に投与することにより、脂肪肝の形成には影響を与えずに、NASHの病理所見である炎症所見と線維化を著しく抑制することを見出したという。また、ピルフェニドンはNASHモデルマウスにおいて認められた肝臓の細胞死を抑制。培養肝細胞においても、腫瘍壊死因子(TNF-α)により誘導される細胞死を抑制したという。
今回の研究により、ピルフェニドンがNASHの予防薬・治療薬として適応拡大(ドラッグ・リポジョショニング)できる可能性が明らかになった。また、過剰な肝細胞死を抑制することがNASHの予防・治療につながる可能性があるため、NASHの病態解明と新たな治療法開発のためにも重要な知見である、と同研究グループは述べている。
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・東京医科歯科大学 プレスリリース