プラザキサ投与は大出血や重篤な有害事象のリスクを抑制
独のベーリンガーインゲルハイムは3月19日、心房細動に対するカテーテルアブレーションを施行予定の患者を対象に、「プラザキサ(R)」(一般名:ダビガトランエテキシラート)による抗凝固療法を継続的に実施した際の安全性と有効性を検討する「RE-CIRCUIT(R)試験」の新たなデータを発表した。アブレーション周術期にプラザキサによる継続的な抗凝固療法を受けた心房細動患者は、ワルファリンの継続投与と比べて、大出血や重篤な有害事象が少ないことが示されたという。試験結果は、米国心臓病学会(ACC)のLate-Breaking Clinical Trialsで発表され、「New England Journal of Medicine」にも掲載されている。
心房細動は最も多くみられる不整脈のひとつ。心房細動患者が経験する不規則な心拍リズムを正常化するため一般的に行われる治療法がアブレーションで、足の付け根などの太い血管からカテーテルを入れ、心臓内部で異常心拍リズムの原因となっている部分を高周波電流で焼灼するか、冷却剤を注入し凍結させて隔離する。毎年、世界で20万件以上のアブレーション治療が施行されている。アブレーションには血栓塞栓症および出血のリスクが伴うことから、これらのリスクを最小限に抑えるため、アブレーション施行前、施行中、施行後の抗凝固療法は慎重に実施する必要がある。
心房細動に対するカテーテルアブレーション周術期の抗凝固療法に確かな知見を提供
プラザキサは、非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中および全身塞栓症の発症抑制を適応として2011年3月に日本で発売。新世代の経口抗凝固剤として、100か国以上で承認されている直接トロンビン阻害剤(DTI)だ。
RE-CIRCUIT試験は、非弁膜症性心房細動患者を対象にカテーテルアブレーション周術期の継続内服抗凝固療法としてプラザキサとワルファリンを比較評価する無作為化試験。3~4か月の治療期間中および治療終了から1週間後のフォローアップ来院時に、安全性および有効性を評価した。同試験には全世界の104施設で704例が登録、そのうち635例に抗凝固薬の継続治療が行われ、かつアブレーションが実施された。635例の患者は、実際の医療現場でこの治療を受けている患者と同様のプロファイルを有していたという。アブレーション治療の実施前に、経食道心エコーによるスクリーニングを全例で実施し、左心房に血栓がないかを確認している。
同試験では、ワルファリンを投与された318例のうち22例で主要評価項目である大出血が発現。一方、同剤の投与を受けた317例のうち大出血が発現したのは5例で、77.2%の相対リスク低下が示された。小出血については、同剤はワルファリンと同程度の発現率だったという。同剤を投与された患者では血栓塞栓性イベントは発生しなかったが、ワルファリンを投与された患者では1件発生した。これらの結果から、心房細動に対するカテーテルアブレーション治療において、同剤の継続投与が、ワルファリンの継続投与と比較して重篤な有害事象の件数が少なく、大出血を有意に抑制していることが明らかとなったという。
同社は、これらの結果は、心房細動に対するカテーテルアブレーション周術期の抗凝固療法に確かな知見を提供するとしている。