質疑では、郡和子議員(民進)が「臨床研究法案の立法に当たっては、人間の尊厳や被験者保護の確保という観点が非常に重要にもかかわらず、企業と研究者の資金の関係に強く関心が向き、検討会では一度も検討されていない」と指摘した。
その上で、第二次世界大戦がもたらした人権侵害など「過去の系統的な反省を行うことがなければ、近視眼的な企業と研究者の不適切な金銭関係の事案のみに焦点を当てた立法になってしまうのではないか」と懸念を表明。「実施基準においてGCPと同様に、被験者の人権保護と安全性保持、研究の信頼性確保が主軸となる原則にすることをしっかり規定してもらいたい」と迫った。
塩崎恭久厚労相は、「研究対象者の人権保護などを確保することは極めて重要なこと。今後、省令で定める実施基準において、GCPと同様、明確に規定することを検討していくべきではないか」と応じた。
また郡議員は、特定臨床研究を審査する「認定臨床研究審査委員会」を50程度に集約する方向について、特定臨床研究数を把握せずに50の臨床研究審査委員会で審査することが現実的なのか質した。
塩崎厚労相は、特定臨床研究の新規申請件数を年間約800件程度と見込み、全国で現在50程度の認定臨床研究審査委員会で月1~2件の実施計画の審査を想定していることを明らかにし、「新規申請が年800件程度見込まれることを考えれば、実施計画の審査が滞ることはない」との考えを示した。
その上で、附帯決議では、臨床研究法の施行に当たり、国際人権規約の規定の趣旨を尊重し、被験者保護に万全を期すこと、実施基準などで被験者の権利尊重を明確に規定することを求めた。
また、実施基準の策定に当たって、ICH-GCPやGMPに準拠し、臨床研究の信頼性確保に努めること、治験と臨床研究の制度区分と活用方法を明確化すると共に、承認申請資料として臨床研究データを活用できる仕組みを検討すること、特定の認定臨床研究審査委員会に審査業務が集中することにより、業務の質や公正性が損なわれないよう運営環境の整備を図り、被験者の確実な保護に努めることなどを求めた。