グローブを内側に巻き込みながら脱ぐことで感染性物質の飛沫を防止
大阪大学は3月13日、手術室や救命センター、外来処置室などでニーズの高い「ひとりで着脱が可能な手術用ガウン」を共同開発し「セルフガウン」として実用化したと発表した。この研究は、同大大学国際医工情報センター次世代内視鏡治療学共同研究部門の中島清一特任教授(常勤)らと、大衛株式会社、トクセン工業株式会社の研究グループによるもの。同ガウンは4月10日に商品化予定だ。
画像はリリースより
先進諸国の医療現場では、診断・手術・治療の高度化・複雑化・細分化に伴って、サポートスタッフの労働負荷を軽減し、人的資源を最大限に活用する取り組みが検討されている。特に、大規模災害時における医療体制の整備やエボラ出血熱など、さまざまな感染症に対する危機管理が喫緊の課題だ。医療現場の専門性や特殊性を考慮すれば、患者の安全性を最優先するための職員配置はもちろんだが、医療機器だけでなく非医療機器についても一層の高機能化、周辺環境の整備を進める必要がある。このような医療現場のニーズを受け、研究グループはサポートなしで医療従事者が自身で着脱できる手術用ガウンの研究に着手したという。
大規模災害や救急、感染症アウトブレイクの現場でも迅速な対応を可能に
従来のガウンは、首ヒモ・内ヒモ・腰ヒモを結ぶ際にサポートスタッフの介助がなければ清潔に着脱できない設計だったが、今回開発されたセルフガウンは、首ヒモの代わりに首周りにバネ性のある特殊リングを編み込み、背中の引き合わせ構造を立体設計することで内ヒモを廃止。さらに、腰ヒモに特殊なミシン目加工を施し、粘着テープによる仮止め機能を付加して、一切の介助なしで着脱できる画期的な方式を実現したという。セルフガウンの特徴は、感染性物質の飛沫を防止できるよう、グローブを内側に巻き込みながら一緒に脱げる点。従来のガウンは、先にグローブを脱いでから、背面のヒモをほどいて脱ぐため、グローブに付着した感染性物質が飛沫し周囲を汚染するリスクがあったが、脱衣に伴うこのリスクをセルフガウンは事実上ゼロにできるという。
西アフリカで猛威を振るったエボラ出血熱の感染患者治療では、多くの医療スタッフが現地に入って奮闘したが、感染防止のために着用していた防護服を脱ぐ際に、付着していた感染性物質に触れ一部の関係者が感染する医療事故も報告されている。安全・迅速に脱げる手術用ガウンは、このような現場で効果を発揮できる非医療機器となるもので、大規模災害や救急の現場、感染症アウトブレイクの現場などでも医療従事者の迅速な対応が可能になる。
今後、3者は感染症対策専門家の意見も参考に、同着脱方式のさらなる改良を進めていく方針。また、この着脱方式を介護衣類に応用できれば、超高齢社会を迎えた日本において、今回の研究の意義がますます広がっていくと、研究グループは述べている。
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