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肝臓内の細胞間接着・接触が糖代謝異常で重要な役割を果たす-東京医歯大ら

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2017年03月17日 PM12:30

肝細胞のNotchシグナルを介して糖代謝異常を惹起

東京医科歯科大学は3月13日、肝臓における新たな糖代謝制御機構を発見したと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科分子内分泌代謝学分野および九州大学大学院医学研究院病態制御内科学分野の小川佳宏教授と同大医学部附属病院の土屋恭一郎助教、宮地康高大学院生らの研究グループが、同大学院医歯学総合研究科先進倫理医科学開発学分野、大阪大学、鶴見大学と共同で行ったもの。研究成果は「Cell Reports」に3月14日付けで掲載されている。


画像はリリースより

肥満は、2型糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病の原因となるため、その予防法や治療法の確立は重要な課題だ。これまで、肥満になると肝臓に好中球やリンパ球などの白血球が集積し、肝臓におけるインスリン抵抗性と糖代謝異常を引き起こすことで、2型糖尿病の原因のひとつになることが知られていた。肝臓には、肝類洞内皮細胞(LSEC)と呼ばれる類洞と肝細胞を隔てる細胞が存在するが、肥満において白血球が肝臓に浸潤する際、どのような分子機構でLSECと相互作用するのかは不明だった。また、肝臓に浸潤した白血球が肝細胞と接触することによる両細胞間の物理的な相互作用が、糖代謝機能に及ぼす影響についても明らかになっていなかった。

新しい糖尿病治療法の開発へとつながる可能性

研究グループは、緑色を発する蛍光タンパクのひとつであるEGFPを顆粒球特異的に発現する遺伝性肥満マウスの生体イメージングにより、対照の非肥満マウスと比較して、多数の顆粒球が肝類洞に接着していることを発見。また、電子顕微鏡を用いた解析では、多数の白血球が肝細胞の間に浸潤していることがわかった。肥満マウスのLSECでは、ケモカインや炎症性サイトカイン、接着因子遺伝子の発現が上昇、LSECの細胞表面において接着因子のひとつであるVCAM-1の発現が増加し、VCAM-1と結合するVLA-4を介した白血球との細胞接着が亢進していることを明らかにしたという。

さらに、肥満マウスにVLA-4の働きを阻害する抗体を投与すると、顆粒球とLSECの接着および肝臓への白血球の浸潤が抑制され、高血糖が改善。肥満マウスの肝臓では、浸潤した白血球が肝細胞と接触している様子が電子顕微鏡で観察された。マウス肝臓内の白血球と肝細胞を実際に接触させて培養すると肝細胞からの糖の産生が増加。細胞同士の接触により活性化されるシグナルであるNotchシグナルを介して、糖の産生を促進する酵素であるグルコース-6-ホスファ ターゼの遺伝子発現が増加することがわかったという。これにより、肝臓に浸潤した白血球が肝細胞と接触し、Notchシグナルを活性化して高血糖を引き起こす機構が初めて解明された。

同研究成果によって、肥満が原因の糖代謝異常において、LSECと白血球とのVLA-4を介した細胞接着、および浸潤白血球と肝細胞とのNotchシグナルを介した細胞接触の意義が明らかになった。今後は肝臓内の細胞間の物理的相互作用が新しい糖尿病の治療標的になることが期待されると、研究グループは述べている。

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