股関節負荷に一日平均歩数をかける新指標、股関節累積負荷を提案
京都大学は3月15日、歩き方と歩数の累積負荷が変形性股関節症の進行に影響するという研究結果を発表した。この研究は、同大学大学院医学研究科の建内宏重助教、同研究科の市橋則明教授らの研究グループによるもの。研究成果は国際変形性関節症学会の学術誌「Osteoarthritis and Cartilage」に掲載された。
画像はリリースより
変形性股関節症は、股関節の痛みや可動範囲の制限、筋力低下などの症状を呈し、歩行や立ち座りなどの運動機能や生活の質にも大きな悪影響を与える。女性に好発し、日本での患者数は推計約120万~420万人。慢性進行性の疾患であり、骨形態の異常や加齢、性別など複数の要因が疾患進行に関わることが明らかになっている。一般的に、股関節への過剰な負荷が疾患を進行させる可能性があると考えられてきたが、関節へのどのような負荷が進行を加速させてしまうのか、その要因は明らかでなかった。
変形性股関節症の進行予防に有効なリハビリテーションにつながる可能性
研究グループは、患者一人ひとりの歩き方の違いに影響される一歩ごとの股関節への負荷と、日常生活や仕事による一日の活動量(歩数)に着目。同大学医学部附属病院整形外科で変形性股関節症と診断され、経過観察中の患者50名を対象として、研究開始時にレントゲン画像により股関節の隙間の幅を測定し、歩き方の3次元的な詳細な分析を行って、一歩ごとに股関節に加わる力学的負荷を定量化した。さらに、一週間の歩数を歩数計により記録して、一日平均歩数を算出。股関節負荷に一日平均歩数をかけることで、今回の研究で提案した新指標である股関節累積負荷を算出したという。
分析の結果、一歩ごとの股関節への負荷と一日の活動量は、それぞれ単独では疾患進行に大きな影響はないものの、股関節累積負荷が増すことで変形性股関節症が進行することが分かった。さらに、研究開始時点での年齢や体重、関節症の進行度の影響も含めて検討したところ、やはり股関節累積負荷が増すことで疾患が進行することが判明したという。今回の研究成果は、股関節への力学的な負荷の観点から変形性股関節症の進行に影響を与える要因を明らかにした世界初の報告だ。
今回の研究を踏まえ、変形性股関節症を有する患者の歩き方の分析や、活動量の実態に関する研究が世界的に進み、疾患進行についてハイリスク患者を特定できるようになることが予想される。さらに、歩き方の改善や活動量のコントロールなどを手段として、変形性股関節症の進行予防を目的とした研究を実施することで、変形性股関節症の進行予防に有効なリハビリテーションが明らかになる可能性があるとして、今後の研究に期待が寄せられている。
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・京都大学 研究成果