自閉症など発達障害の一因と考えられているグリア細胞の発達異常
金沢大学は3月14日、高次脳機能の中枢と考えられている大脳皮質の発達の新たな仕組みを明らかにしたと発表した。この研究は、同大学医薬保健研究域医学系の服部剛志准教授、堀修教授らの研究グループによるもの。研究成果は、米国のグリア細胞研究専門誌「GLIA」オンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
脳には神経細胞と共に脳を構成するグリア細胞が存在し、その数は脳の細胞の50%以上を占めると言われている。脳が正常に発達するためには、神経細胞とグリア細胞の双方が胎児期だけでなく生後においても適切に発達することが重要だ。生後の脳において神経細胞は長い突起を伸ばし脳内で複雑なネットワークを形成し、情報のやりとりを行うようになる。一方、グリア細胞は神経細胞のネットワーク形成や情報伝達を調節し、神経細胞の生存にも役立っていると考えられている。
これまで脳発達障害の研究では、主に神経細胞に焦点が当てられてきたが、最近になってグリア細胞の異常についても報告されるようになってきた。しかしながら、生後脳におけるグリア細胞の発達の仕組み、さらにその異常と発達障害との関わりについては、いまだに不明な点が多い。
CD38遺伝子がグリア細胞の発達のために重要
研究グループは、脳の発達障害とグリア細胞の関係を解明するために、行動異常を示す種々の発達障害モデルマウスを用いて、グリア細胞の発達異常を解析してきた。そして今回、社会性異常を示すCD38遺伝子がないマウスでは大脳皮質の形成に異常があり、それがグリア細胞の発達異常であることを発見したという。
また、CD38遺伝子がないとアストロサイトに異常が起こり、その異常が細胞同士の相互作用異常を引き起こし、オリゴデンドロサイトの発達異常を引き起こすことを解明。これにより、CD38遺伝子がグリア細胞の中でもアストロサイトの発達に必要であり、この異常の影響でオリゴデンドロサイトの発達に遅れが生じることがわかったという。
グリア細胞の発達に着目した脳の発達障害の仕組みについての研究はまだ少なく、同研究は今後のグリア細胞の研究の重要性を示すものだ。今回の研究を発展させることにより、自閉症などの脳発達障害の原因究明、治療法の開発につながることが期待されると研究グループは述べている。
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