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長期埋め込み可能な人工硝子体を開発-筑波大ら

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2017年03月14日 PM02:00

眼内に注射で注入、10分以内にゲル化して人工硝子体として使用可能

筑波大学は3月10日、長期埋め込み可能な人工の硝子体の開発に世界で初めて成功したと発表した。この研究は、東京大学大学院工学系研究科バイオエンジニアリング専攻の酒井崇匡准教授と筑波大学医学医療系眼科学の岡本史樹講師らの研究グループによるもの。研究成果は「Nature Biomedical Engineering」に3月9日付けで掲載されている。


画像はリリースより

網膜のさまざまな疾患に対して行われる硝子体手術では、硝子体置換材料が必須だ。従来の材料であるガスやシリコンオイルなどは疎水性であるため生体適合性が低く、長期の使用には適さないことから、長期的かつ安全に置換可能な人工硝子体材料の開発が望まれている。

ハイドロゲルは生体軟組織に似た組成を持っており、特に、注射により生体内に埋植が可能で、生体内でゲル化するインジェクタブルゲルは様々な医用用途への応用が期待されているが、生体内でゲル化を誘起する反応が周辺組織に刺激を与えることや、生体内において周囲の水を吸い込んで膨らみ、周辺組織を圧迫する等の問題を有しており、眼科領域での成功例はこれまでなかった。

将来的にはすべての硝子体手術が日帰りでできる可能性も

今回の研究では、ゲルが作製されてから分解されていくまでのすべての期間にわたり、膨潤圧を周辺組織に影響を及ぼさないレベルである1kPa以下まで低減することに成功。さらに、ゲル化過程を含め、周辺組織に対する毒性・刺激性も容認可能なレベルまで低減することに成功したという。その結果、上記の特性を保ちながら、液状のままで眼内に注入し、内部において速やかにゲル化させることを世界で初めて可能にした。研究グループは、この技術を動物モデルに用いて、ハイドロゲルによる網膜剥離の長期にわたる治療を世界で初めて実現。人工硝子体として1年以上、なんら副作用をおこすことなく使用可能であることが確認できたという。

ハイドロゲルは高分子と水からなる材料だが、高分子は毒性を発揮する可能性がある。今回用いた手法では、高分子の濃度を極限まで低減し、1%以下というきわめて低い高分子濃度でハイドロゲルを作製することに成功。一般に、高分子濃度を1%以下まで下げると、注入後ゲル化に必要な時間が大きく遅延し、実用化は困難になるが、今回の研究は、新たな分子設計により10分以下でゲルを作製することを可能にした。

現在、網膜疾患の手術治療には、ガスやシリコンオイルなど、長期埋植に向かない材料が用いられており、患者は入院で1週間程度うつ伏せの体位を保たねばならず、数か月後には抜去を含む再手術を受ける必要があった。今回開発した人工硝子体を用いれば、再手術やうつ伏せ管理の必要もなくなるという。これにより、将来的には網膜疾患の治療が日帰りで可能になる、画期的な治療法への道がひらかれたと研究グループは述べている。

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