11施設が参加した「福岡・近畿パーキンソン病研究」のデータを活用
愛媛大学は3月9日、日本で初めて、ビタミンD受容体遺伝子多型がパーキンソン病リスクと関連することを示す研究成果を発表した。この研究は、同大学が主導する共同研究チーム「福岡・近畿パーキンソン病研究グループ」(福岡大学、 大阪市立大学、宇多野病院、九州大学、和歌山県立医科大学、京都大学、久留米大学、南京都病院、刀根山病院、京都市立病院、大牟田病院)によるもの。研究成果は、学術誌「Neuroscience Letters」の電子版に2月16日付けで公表されている。
ビタミンD不足は多くの慢性疾患の発症に影響し、パーキンソン病でも近年のメタ解析から、活性型ビタミンDがパーキンソン病と関連があることが示されている。活性型ビタミンDは、ビタミンD受容体を介して作用するが、これまでの海外の研究でビタミンD受容体(VDR)遺伝子多型とパーキンソン病リスクとの関連が調べられており、rs2228570という遺伝子多型がパーキンソン病のリスクに影響を与えていることがわかっていた。
そこで今回研究グループは、福岡と近畿の11の医療機関で実施した「福岡・近畿パーキンソン病研究」のデータを活用し、日本で初めて、VDR遺伝子多型とパーキンソン病との関連について解析したという。
rs2228570遺伝子多型がパーキンソン病リスクと関連している可能性
解析の対象としたのは、英国のパーキンソン病診断基準に基づいてパーキンソン病と診断された、発症後6年未満の229例。福岡大学、大阪市立大学、宇多野病院、京都大学、京都市立病院、九州大学、久留米大学、大牟田病院、刀根山病院、南京都病院、和歌山県立医科大学でリクルートしたという。対照群として、福岡大学、大阪市立大学または宇多野病院に入院中もしくは通院中の患者で、神経変性疾患と診断されていない357名を解析。性別、年齢、居住地域、喫煙で補正した。
その結果、VDR遺伝子多型rs2228570は、パーキンソン病のリスクと統計学的に有意な負の関連を示したという。しかしながら、この関連は多重比較の補正をすると、有意ではなくなった。VDR遺伝子多型rs731236、rs7975232およびrs1544410とパーキンソン病との間には関連は認められなかった。また、喫煙がパーキンソン病に予防的であることがわかっているため、喫煙がVDR遺伝子多型rs2228570とパーキンソン病との関連に影響するかどうかを調査。rs2228570のGAもしくはAA遺伝子型をもつ喫煙経験者に比較すると、rs2228570 のGG遺伝子型もつ非喫煙者では、パーキンソン病のリスクが3.8倍上昇したが、統計学的には有意な交互作用は認めなかったという。
研究グループは、今後さらなる研究データの蓄積が必要としたうえで、今回の結果はビタミンD受容体遺伝子多型がパーキンソン病のリスクに影響する可能性を示す関心の高い研究成果であるとしている。
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・愛媛大学 プレスリリース