京都大学大学院医学研究科の奥野恭史氏は7日、厚生労働省が省内で開いた「保健医療分野におけるAI活用推進懇談会」に、「創薬における人工知能応用」と題する資料を提示。現在、医薬品医療機器総合機構(PMDA)が行っている医薬品・医療機器等の承認審査や安全対策などの業務に、人工知能(AI)を活用することを提案した。AIに過去の承認審査報告書や添付文書改訂に関するデータを学習させることで、審査の効率化や添付文書改訂の自動化につながることが見込まれるという。業務全般が効率化されれば、製薬企業の負担軽減にもつながることから、「期待大」としている。
この日の懇談会では、AIの活用が想定される領域の一つに、「創薬」が取り上げられた。奥野氏は、「医薬品開発フローとAIニーズ」の中で、「PMDA、米国食品医薬品局(FDA)等の薬事承認プロセスの自動化とノウハウ蓄積のためのAI(自然言語処理等)に期待大」との見解を示した。
また、AIに過去の添付文書改訂に関する膨大なデータを学ばせることによって、改訂作業の自動化につなげるなど、市販後の安全対策業務を効率化させることも想定されるという。
企業には、主要な臨床試験データをCDISC(Clinical Data Interchange Standards Consortium)標準に則った形式で提出することが義務づけられているが、この分野でのAIの活用も提案。
奥野氏は、「製薬会社同士が自社データを持ち出して共有することは困難」との課題を示し、「国策として、PMDAが保有するデータ(特にCDISC等)を学習データとして利活用することが期待される」としている。
AIを活用した業務の効率化は、審査の迅速化や安全対策の充実を図るため、国が進めているPMDAの人員増にも影響することが懸念される。
会議は、塩崎恭久厚労相の私的懇談会という位置づけで、大臣に近い関係者によると、「自由闊達な議論をしてもらいたい」(塩崎大臣)との意向から、会議の資料に盛り込まれたようだ。
一方、1月16日の初会合では、AIの活用が想定される領域の一つとして、「薬剤業務系(鑑査等)」が盛り込まれていた。懇談会では、まだ議論の俎上に上がっていないものの、「自由闊達な議論」の観点から、「可能性は排除していない」(厚労省)という。