血中アイリシン濃度が身体活動性と相関、気腫化とは逆相関
大阪市立大学は3月6日、身体活動性と関連のある筋肉由来タンパクであるマイオカインと慢性閉塞性肺疾患(COPD)の病理学的変化である気腫化との関連性を明らかにしたことを発表した。この研究は、同大学医学研究科呼吸器内科学の杉山由香里大学院生、浅井一久講師、平田一人教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「International Journal of Chronic Obstructive Pulmonary Disease」に掲載された。
画像はリリースより
COPDは主にタバコ煙吸入により生じる慢性の肺疾患で、日本での患者数は500万人以上と報告されている。COPDは慢性に経過するため、日本での死因としては第10位、全世界ではがん、心疾患、脳血管障害に次ぐ第4位となっており、病態の解明、治療法の開発が望まれている。
身体活動性の維持・改善が、COPDの予防・治療に寄与する可能性
研究グループは、同大学医学部附属病院に通院中の40名のCOPD患者を対象に、筋肉由来のマイオカインの一種であるアイリシンがCOPD病態に与える影響を解明することを目的として、血中アイリシン濃度測定と肺機能検査、胸部コンピュータ断層撮影法(CT)を実施。その結果、血中アイリシン濃度は身体活動性と相関を示し、胸部CT上の低吸収域(気腫化)は、血中アイリシン濃度と強く逆相関していることが明らかになった。
また、気腫化の原因のひとつであるタバコ煙による肺胞上皮細胞のアポトーシスがアイリシンにより抑制されることを見出したという。これらの結果は、アイリシンの気腫化からの肺保護作用を世界で初めて明らかにするとともに、COPDの治療薬である気管支拡張薬やリハビリテーションによる身体活動性の維持・改善が、アイリシンを介してCOPDの予防・治療に寄与する可能性を示した重要な成果。実際の臨床応用までにはさらなる臨床研究・基礎研究が必要であるとして、研究グループは今後も研究を進めていくとしている。
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