アトピー性皮膚炎のそう痒をターゲットにした初の薬剤
中外製薬株式会社は3月2日、アトピー性皮膚炎を予定適応症として開発中の抗IL-31レセプターAヒト化モノクローナル抗体nemolizumabに関し、第2相国際共同治験(XCIMA試験)の成績が、同日付けで「The New England Journal of Medicine」電子版に掲載されたことを発表した。
nemolizumabは、IL-31レセプターA(IL-31RA)を標的とした、抗IL-31レセプターAヒト化モノクローナル抗体。IL-31はそう痒誘発性サイトカインで、アトピー性皮膚炎および透析患者におけるそう痒の発生に関与していることが報告されている。nemolizumabは、IL-31とそのレセプターの結合を競合的に阻害することにより、IL-31の生物学的作用を抑制し薬効を発揮するという。
nemolizumabの開発および販売については、日本、台湾を除く全世界における開発・販売の独占的実施権をガルデルマ社へ、また日本での皮膚科領域における開発・販売権をマルホ社へそれぞれ許諾している。
12週時における有効性および忍容性を確認
今回データが発表された試験は、中等症から重症のアトピー性皮膚炎患者264例を、nemolizumabを4週ごとに0.1、0.5、2.0 mg/kgを投与する群と、8週毎に2.0 mg/kgを投与する群、またはプラセボ群(4週間ごと)に1:1:1:1:1の比でランダムに登録した。
主要評価項目である12週時のそう痒VAS変化率は、nemolizumab投与群(0.1、0.5 mg/kgおよび2.0 mg/kg、4週ごと)において-43.7%、-59.8%、-63.1%となり、プラセボ群の-20.9%に対し有意な改善が認められた(いずれもp<0.01)。副次的評価項目である12週時のEASI変化率は、プラセボ群の-26.6%に対し、nemolizumab投与群(同)で-23.0%、-42.3%、および-40.9%であり、sIGAの2ポイント以上の改善が認められた患者の割合は、プラセボ群の10.5%に対し、nemolizumab投与群(同)では13.8%、37.5%、25.1%だったという。
頻度の高かった有害事象は、アトピー性皮膚炎の悪化、鼻咽頭炎、上気道感染症、末梢性浮腫、およびCPK上昇であった。有害事象のため治験中止に至った症例はnemolizumab群で15例であり、主なものはアトピー性皮膚炎に関連した事象(アトピー性皮膚炎の悪化、剥脱性皮膚炎)10例だったという。
今回NEJMに掲載されたこれらの臨床成績は、アトピー性皮膚炎におけるIL-31制御の重要性を示すものであり、nemolizumabは有力な治療選択肢となることが期待される。中外製薬は、nemolizumabを患者の元にいち早く届けるため、パートナーであるガルデルマ社およびマルホ社と連携していきたいと述べている。
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