アボルブの出荷調整と薬価引き下げが影響
グラクソ・スミスクライン(GSK)は2月28日、日本法人の2016年通期売上高が前年比1.7%減収の2921億円(薬価ベース)になったと発表した。発表時の会見で日本法人のフィリップ・フォシェ社長は減収要因について、委託製造先での別カプセル混入問題による前立腺肥大症治療薬・アボルブの出荷調整と2016年4月の薬価引き下げの影響が大きかったと説明。そのうえで同社のコアである呼吸器領域を軸に、希少疾病疾患領域での製品投入も押しすすめ、国内市場でのプレゼンスを高めていきたい意向を示した。
GSK日本法人のフィリップ・フォシェ社長
フォシェ社長は、2016年には吸入ステロイド・長時間作動型吸入β2刺激薬配合剤のレルベアの慢性閉塞性肺疾患(COPD)への適応拡大、難治性喘息を適応として承認された抗IL-5抗体薬・ヌーカラの発売とコア領域の呼吸器領域での進展を報告。また「現在国内の喘息患者では2人に1人がGSK製品を利用している形となっている。1997年には年間約5,500人だった日本国内の喘息死患者は2015年には約1,500人まで減少したが、これをいかに減らせるかが当社にとっては重要になる」との認識を強調した。
日常臨床に近い形での無作為化比較試験「日本でも」
一方、新有効成分を含むフェーズ1が10プロジェクト以上、フェーズ2、フェーズ3の後期開発ステージが20プロジェクト以上進行中の日本国内での開発状況について、専務取締役の高橋希人開発本部長が説明。重症喘息で昨年承認を受けたヌーカラは、炎症細胞の好酸球機能を調整するIL-5を標的としていることから、好酸球増加に伴う疾患である好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)や鼻茸への適応拡大が進んでいることを紹介した。
また、高橋本部長は研究開発に関する新たな取り組みとしてGSKのグローバルが電子カルテの患者情報共有が進んでいるイギリスのサルフォードで行ったSalford Lung Studyを紹介。同研究では、喘息での通常治療と同社のレルベアを日常臨床に近い形で無作為化比較試験として実施できたとし、「日本でも同様の試験をやっていきたい」と述べた。そのうえでこうしたデータ利活用に関しては、開発本部に新たにリアルワールドデータの専従部門を新設することを明らかにした。
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