運動療法の種類・強度の違いが、脂肪肝の肝病態に及ぼす影響について検討
筑波大学は2月27日、中年肥満男性を対象に実施した臨床試験を実施し、運動プログラムの種類と強度の違いが、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の肝脂肪蓄積と肝硬度に及ぼす影響について検討した結果を発表した。この研究は、同大学医学医療系の正田純一教授らの研究グループが、同大学体育系の田中喜代次教授らの研究グループと共同で行ったもの。研究成果は、電子ジャーナル「SCIENTIFIC REPORTS」に2月22日付けで公開されている。
画像はリリースより
研究グループはすでに、脂肪肝に対する運動療法に関して多くの臨床試験を実施。「脂肪肝における運動単独療法の効果」、「脂肪肝の治療に対する食事療法に運動療法を加える意義」、「脂肪肝における最適な運動時間」、「日常的運動が不可能な脂肪肝を有する高度肥満患者や高齢者を対象にした新しい運動トレーニング方法の実施とその有効性」など、運動が脂肪肝の病態改善効果を有することを明らかにしてきた。
今回の研究では、脂肪肝の日常管理における運動療法の重要性をさらに検証するために、運動療法の種類およびその強度の違いが脂肪肝の肝病態に及ぼす影響について検討を行なったという。
HIATは肝硬度が増した進行脂肪肝に対して有用
研究グループは、NAFLDを有する男性の肥満者を対象に、筑波大学主催の減量教室を開催。3つの運動プログラムを1週間に3回、12週間にわたって実施し、脂肪肝の肝病態の改善効果および効率的な実施方法について検討した。平均年齢49.3歳の参加者61名(平均BMI:28.1)を、レジスタンス運動 (RT)を行う群と高強度インターバルトレーニング(HIAT)を行う群、中強度持続性トレーニング(MICT)を行う群の3群に割り付け、運動の種類と強度の違いが脂肪肝の肝病態に及ぼす影響について、ランダム化比較試験を行った。
解析の結果、3群(RT、HIAT、MICT)のすべてにおいて、同等な肝脂肪蓄積の減少効果が得られた(それぞれ、-14.3%、-13.7%、-14.3%)。また、HIAT群においてのみ、肝硬度の改善(-17%)とクッパー細胞の異物貪食機能の改善(+18%)を確認。さらに、末梢血単核球における生体の抗酸化ストレス応答にかかわる転写因子であるNrf2関連遺伝子発現を測定したところ、HIAT群においてのみ、他のトレーニングに比較して、抗酸化ストレス応答遺伝子(HO-1)の発現増加(+3%)が認められたという。
これらの結果より、脂肪肝の肝脂肪蓄積は運動トレーニングの種類とその強度に依存せずに改善することが明らかとなった。肝硬度はHIAT群のみで減少したことから、HIATは脂肪肝の肝臓における炎症と酸化ストレス病態を抑える方向に働くものと推測され、肝硬度が増している進行した脂肪肝に対して有用な運動プログラムであると考えられたという。このことから、脂肪肝の病態改善を得るためには、規則的に運動を実施し、徐々に運動強度を増加させることが有効であることが示唆された。
研究グループによると、今回の臨床試験のデザインは小さなサンプルサイズで設定されたもの。今後、脂肪肝診療ガイドラインに運動療法の効果を掲載するためには、大規模なサンプルサイズからなる臨床試験の実施とエビデンスに関する再現性の確認が必要であるとしている。
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