■創薬の未来考える機会に
日本薬学会第137年会が3月24~27の4日間、「復興と発展、薬学の未来へ」をテーマに、仙台市の仙台国際センターと東北大学川内キャンパスで開かれる。未曾有の東日本大震災からもうすぐ6年が経過する中、甚大な被害を受けた被災地の仙台で開催される今回の年会では、東北地方の復興に願いを込めると共に、創薬の活発化に向け薬学の復興も強く意識した。昨年の大村智北里大学特別栄誉教授に続き、日本人として2年連続でノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典東京工業大学栄誉教授の講演が行われる一方、過去最高のポスター演題数が集まった国際創薬シンポジウムをさらに拡充。薬学の将来を担う若手研究者の育成や男女共同参画推進にも取り組む。遠藤泰之組織委員長(東北医科薬科大学薬学部創薬化学教室教授)は、「東北地方の復興に願いを込めつつ、難しさを増す新薬開発の未来を考える年会にしたい」と話している。
今回の年会では、ノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典氏の受賞記念特別講演「酵母から始まったオートファジー研究」を「目玉企画」と位置づける。大隅氏の講演は、年会最終日に1200人を収容できる東北大学百周年記念会館川内萩ホールで行われる。多くの参加者が聴講できるよう別会場で同時中継するほか、同日中に録画放映も行われ、合計4000人以上の参加者が聴講できる環境を整えた。
薬学会理事会が主導する国際創薬シンポジウムは、3回目を迎えてプログラムを一層充実させた。プレナリーレクチャーでは、人工知能ロボットを活用した創薬やクライオ電子顕微鏡を利用した蛋白質の構造解析といった最新の創薬の基盤技術に関する話題提供が行われ、招待ポスタープレゼンテーションの演題も44題と過去最高となった。年会3日目にメイン会場の仙台国際センターの会議棟で、1日かけて全て英語で行われることから、外国人の参加者増に期待をかける。
さらに、国際交流シンポジウムとして、日米合同の「生物合成系の再設計による複雑骨格機能分子の革新的創成科学」を行うほか、日本薬学会・韓国薬学会による日韓合同シンポジウム「薬物誘発性肝障害の機序、評価、予測、診断」、FIPフォーラム2017「次世代の薬学研究者育成のための薬学教育の国際潮流」を企画した。
新たに設定した理事会企画シンポジウムでは、薬学会における男女共同参画推進を取り上げる。今回の年会では、託児所の希望者が1月時点で昨年の2倍となる18人に上っている。託児所の拡充を図ったことも男女共同参画推進を象徴する取り組みと言えそうだ。
年会3日目には、仙台市民会館で脳トレで有名な東北大学加齢医学研究所の川島隆太所長による市民講演会「脳を知り、脳を鍛える」を開催する。10代の若者から高齢者まで、ゲームや脳トレのコツなど幅広い年代層が興味を持てる内容となっている。
遠藤組織委員長は「有機化学、生物化学、薬剤学から医療薬学系まで、全ての会員が一堂に会する機会は薬学会年会だけであり、自分の専門外で興味ある研究分野の発表を聞けるチャンスがある。それこそが年会の意義だと思うので、他の研究分野の人と交流を深め、明日からの研究や業務に役立ててほしい」と話している。
特に地方開催となる今回は、メイン会場となる仙台国際センターに展示棟が完成し、地下鉄も開通して利便性が大きく向上したこともあり、効率的な年会への参加が期待できる。それだけに、多くの参加を呼びかけている。