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国内患者数600名弱の希少疾患「周期性発熱症候群」に治療薬登場-ノバルティス

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2017年02月24日 PM02:00

疾患特異的な治療が求められる遺伝性疾患

2016年12月に「(R)皮下注用 150mg」(一般名:カナキヌマブ)が周期性発熱症候群のうち「既存治療で効果不十分な家族性地中海熱」「」「高IgD症候群」の治療薬として適応追加となったことを受け、ノバルティスファーマ株式会社は2月20日、都内でプレスセミナーを開催。「発熱・炎症発作を繰り返す難病『』を知る~発作の予防・コントロールが期待できる新薬の登場、現場で求められる『正しい』診断~」と題し、京都大学大学院医学研究科 発達小児科学の平家俊男教授が講演した。


京都大学大学院 医学研究科 発達小児科学
平家俊男 教授

周期性発熱症候群は、炎症性サイトカインの過剰産生により、慢性的な炎症反応とそれに伴う進行性の組織障害を引き起こす自己炎症性疾患。すでにイラリスの適応疾患であったクリオピリン関連周期性症候群(CAPS)のほかに、(FMF)、TNF受容体関連周期性症候群(TRAPS)、(MKD)が含まれる。自己炎症性疾患という概念自体は1999年に提唱された比較的新しい概念で、自然免疫系の遺伝子変異が原因で発症し、獲得免疫系の異常を病態とする自己免疫性疾患とは区別される。周期熱で発症することが多く、皮疹や関節痛、消化器症状を伴うが、発熱のコントロールが難しく患者のQOLが著しく低下するだけでなく、高度な炎症の持続から成長障害や臓器障害をきたす。AAアミロイドーシスにより心臓・腎臓・消化管に障害をきたすと、生命予後にも影響する重篤な症状を呈する。

同症候群に含まれるのはいずれも非常に稀な疾患で、最も発症頻度の高いFMFでも国内の患者数は500人程度。CAPSは約100人、TRAPSは約30人と推計されおり、MKDは4家系6名の報告があるのみだ。遺伝性の疾患であるため長期にわたる治療が必要となり、副作用の少ない疾患特異的な治療が求められていた。

虫垂炎や関節リウマチ、関節炎の診断でも、既存治療が無効なら疑いを

今回、イラリスの適応追加となった疾患のひとつ、FMFは、周期性の発熱のほか、胸膜や腹膜などの漿膜炎を主徴とし、特に腹膜炎は激烈なことから、虫垂炎と誤診される例が多いという。コルヒチンの内服により9割の患者で症状のコントロールが可能となるが、無効例が1割程度おり、治療法開発が待たれていた。平家氏の経験した12歳女児の症例では、3歳頃から腹痛と胸痛を繰り返し、腹痛で急性虫垂炎と診断されて虫垂切除術を受けていた。発熱や腹痛発作を繰り返すため平家氏の施設を受診し、FMFと確定診断後はコルヒチンの内服で発作が軽快しているという。

TRAPSは、5日以上続く周期性発熱に、筋肉痛や眼痛、関節痛などを伴う。副腎皮質ステロイドが有効だが次第に効果が減弱し、増量せざるを得なくなる。平家氏によると、「小児リウマチと診断されている例にTRAPS症例が紛れている可能性もある」。TRAPSでは発熱のほかに、腹痛や筋痛、皮疹、結膜炎・眼窩周囲浮腫、胸痛、関節痛などの症状がみられるため、それらの症状に対して診断されている例が多いというのだ。平家氏の経験した12歳男児の症例では、生後6か月から関節痛や筋肉痛、腹痛を伴う高熱を繰り返しており、3歳の頃に全身性若年性特発関節炎と診断。副腎皮質ステロイドと免疫抑制剤による治療を受けたがステロイドの増量を余儀なくされていた。12歳でTRAPSと確定診断されたとき、身長は3歳児相当であったという。

MKDは、原因遺伝子が特定される以前は高IgD症候群と呼ばれていた疾患。MVK遺伝子異常によるメバロン酸キナーゼの欠乏により、乳幼児から周期性・遷延性の発熱をみとめ、多くは消化器症状を伴う。慢性全身炎症により成長発達障害を伴い、肝障害や腎障害も合併する。新生児期から繰り返される原因不明の発熱があり、免疫抑制剤や生物学的製剤が無効であるなど、ほかの疾患が否定的な場合に、MVK遺伝子解析を行えばほぼ確実に確定診断できるという。平家氏がMKDと確定診断した症例では、新生児期よりCRP上昇を伴う周期性発熱があり、生後7か月時に全身型特発性関節炎と診断されていたという。

これらの疾患ではいずれも、遺伝子異常によるIL-1βの過剰産生が炎症に関与していると考えられており、抗IL-1療法の研究を進めていたという平家氏。抗IL-1β抗体であるイラリスは、抗IL-1作用を有する。同剤のFMFやTRAPSへの有効性に関する報告も増えており、これまで有効な治療法のなかったFMF、TRAPS、MKD患者にとって、今回の適応追加は福音だ。薬剤費が高額で、医療費助成制度も十分とはいえないが、「日常生活を取り戻せた患者からは好意的な意見がきかれる。将来、この薬が効かなくなったら次の薬はあるのだろうかという先の心配事が出てきている」(平家氏)。IL-1βが病態と推定される疾患はほかにも存在することから、平家氏は、さらなる臨床応用への期待をのぞかせた。

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