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世界で2例目となるチンパンジーのダウン症の症例を報告-京大

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2017年02月24日 AM10:15

チンパンジー22番染色体の異常を持つ個体、ヒト21番染色体トリソミーに相当

京都大学は2月22日、チンパンジーで染色体異常の症例を確認したと発表した。チンパンジー22番染色体の異常(:通常2本である染色体が3本ある異常)を持つ個体で、大型類人猿の22番染色体はヒトの21番染色体に相当するため、ヒト21番染色体トリソミーに相当する症例になるとしている。この研究は、京都大学野生動物研究センター熊本サンクチュアリの平田聡所長らの研究グループによるもの。研究成果は「Primates」に掲載されている。


画像はリリースより

ヒトのダウン症は、21番染色体が3本ある(通常は2本)染色体異常によって引き起こされ、21トリソミーとも呼ばれる。21トリソミーは600人に1人程度の割合で生じると報告されており、体の発育や認知発達の遅れ、身体的障害が生じる場合が多い先天性疾患。ヒト以外の霊長類では、1969年に世界で初めてダウン症に似たチンパンジーの症例がアメリカで発見され、「Science」誌へ報告された。チンパンジー22番染色体のトリソミーの例であり、このチンパンジーでは発達遅滞と先天性心疾患が確認された。その後、ゴリラとオランウータンでも同様の22トリソミーが報告されている。

研究グループは、野生動物研究センター熊本サンクチュアリで飼育されているメスのチンパンジー、カナコの22トリソミーを確認。カナコは、1992年6月2日に国内(熊本サンクチュアリの前身の施設)で、正常な自然分娩で生まれた。母親のカナエにとっては第2子目で、初産から2年が経過。父親のタロウはカナコの前に7個体の子の父親となっている。母親のカナエと父親のタロウの子どもたちは、未熟で生まれて生後間もなく死亡した1例を除いて、カナコ以外にはすべて正常で健康に育っている。

最も近縁なチンパンジーとの比較でヒトとの類似点など解明へ

カナコには、発達遅滞や先天性白内障、眼振(意思とは関係なく眼球が動くこと)、(角膜の変性)、先天性心疾患、および歯の欠損が確認され、いずれもヒトのダウン症に特徴的な症状。チンパンジーのトリソミーとして最初に報告された例では、座る・四足で動くなどの行動の初出が健常個体より遅れる行動発達遅滞が見られている。今回報告のカナコでは、そうした行動発達の検査が行われていないため不確定だが、当時の飼育日誌に特に異常の記述がないことから、顕著な行動発達の遅れはなかったのではないかと考えられる。

今回の報告は、世界で2例目のチンパンジーのダウン症として、ヒトの医学においても参考になる症例となるもの。今後の行動観察などにより、ヒトのダウン症との類似点や相違点などが明らかになれば、ダウン症をよりよく理解することにつながると考えられる。ヒトの疾病全体を見渡すと、ヒトに特有のものから、ヒト以外の動物にも見られるものまでさまざま。ヒトにおける疾病とその対処について、ヒトに最も近縁なチンパンジーとの比較によってより理解が深まると、研究グループは述べている。

なお、カナコは視力を失ったために、他のチンパンジーとの普通の社会生活を送るのが困難になったが、定期的に他のチンパンジーと同居させる機会をもうけており、今後も福祉に配慮し、生活の質を維持するケアを続けていくとしている。(大場真代)

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