厚生労働省は21日、抗微生物薬適正使用の手引きの第一版案を厚生科学審議会の作業部会に示し、概ね了承された。鼻水や喉の痛み、咳や痰によるウイルス性の急性気道感染症のうち、いわゆる“かぜ”には抗菌薬を投与しないことを推奨することが柱。薬剤師から患者への説明例なども盛り込んだ。作業部会でまとめた第一版案は、来月中をメドに開催予定の薬剤耐性(AMR)に関する小委員会に上程する。
手引きは、外来診療を行う医師などに抗微生物薬が必要な状況、必要でない状況を判別できるよう診療を支援することを念頭に置いた内容とし、不必要な抗菌薬が処方されていることが多いとみられる急性気道感染症、急性下痢症に焦点を当てている。
“かぜ”を含めた急性気道感染症は、原因微生物の約9割がウイルスとされ、細菌が関与する場合はごく一部と指摘。鼻水などの鼻症状、喉の痛みなど咽頭症状、咳や痰などの下気道症状が同時にあるウイルス性の急性気道感染症を感冒と位置づけ、感冒には抗菌薬投与を行わないことを推奨した。
急性鼻副鼻腔炎に対しては、細菌性でも抗菌薬投与の有無にかかわらず2週間以内に約7割の患者が治癒するとされ、抗菌薬投与群で副作用の発生割合が多いなど欠点が利点を上回る可能性があることから、軽症例では抗菌薬投与を行わないことを推奨した。
急性咽頭炎に対しては、A群β溶血性連鎖球菌の迅速検査か培養検査により、菌が検出されていない場合は抗菌薬投与を行わないことを推奨した。急性気管支炎に対しても抗菌薬投与は推奨しないとし、さらに急性下痢症には、まず水分摂取を励行した上で基本的に対症療法のみ行うとした。
また、抗菌薬が出ていない場合の薬剤師の患者への対応例として、医師の診察の結果、ウイルスによる感染症で抗菌薬はウイルスに効果はないこと、むしろ抗菌薬の服用で下痢などの副作用が生じることがあり、現時点で服用は勧められないことなどを説明する内容を例示。
ただ、様々な病気の症状が“かぜ”のように見えることがあると注意を促し、3日以上経っても症状が良くならない場合には医師を受診するよう説明例を示した。