中枢神経系において活性があり、脳転移に対しても有効性を確認
中外製薬株式会社は2月21日、スイスのF. ホフマン・ラ・ロシュ社が、ALK阻害剤「アレセンサ(R)」について、欧州委員会より「クリゾチニブに不応または不耐容のALK陽性の進行非小細胞肺がん」に対し条件付き承認を取得したと発表した。
ALK融合遺伝子の発現は、非小細胞肺がん(NSCLC)の約5%で報告されている。この融合遺伝子が発現している細胞は、恒常的にALKチロシンキナーゼ活性が上昇しており、細胞増殖が制御されず、細胞が腫瘍化していると考えられている。
アレセンサは、中外製薬が創製したALK選択性が高い経口のALK阻害剤。チロシンキナーゼ活性を選択的に阻害することにより腫瘍細胞の増殖を阻害し、細胞死を誘導することで抗腫瘍効果を発揮する。さらに、同剤は薬剤を脳から能動的に排出するポンプである血液脳関門で認識されない。このため、中枢神経系において活性があり、脳転移に対しても有効性が確認されているとしている。
安全性プロファイル、これまでの臨床試験の成績と一致
今回の欧州承認のもととなったのは、第1/2相臨床試験のデータ。ひとつ目のNP28761試験は、クリゾチニブ投与後に病勢進行が認められたALK陽性NSCLC患者87人を対象とし、アレセンサの有効性と安全性を検討する北米で実施されたシングルアームオープンラベル多施設共同第1/2相臨床試験。2つ目のNP28673試験は、クリゾチニブ投与後に病勢進行が認められたALK陽性NSCLC患者138人を対象とし、アレセンサの有効性と安全性を検討したグローバルで実施されたシングルアームオープンラベル多施設共同第1/2相臨床試験。
いずれの試験も、患者はアレセンサを1回600mg1日2回経口投与された。また、主要評価項目はIRC判定による奏効率(ORR)。主な副次的評価項目は、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、安全性だった。
その結果、NP28761試験のORRは52.2%、DOR中央値は14.9か月、PFS中央値は8.0か月。一方、NP28673試験のORRは50.8%、DOR中央値は15.2か月、PFS中央値は8.9か月だった。また、アレセンサの安全性プロファイルは、これまでに行われた臨床試験の成績と一致した。一般的なGrade3以上の有害事象は、血中CPK上昇8%、ALT上昇6%、AST上昇5%、呼吸困難3%だったとしている。
中外製薬は、欧米をはじめとした海外でのアレセンサに関する権利をロシュ社に導出している。現在、同剤は米国、クウェート、イスラエル、香港、カナダ、韓国、スイス、インド、および欧州にて「クリゾチニブに不応または不耐容のALK陽性の進行(転移性)非小細胞肺がん」を効能・効果とした承認を取得している。国内では「ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」を効能・効果、販売名「アレセンサ(R)カプセル150mg」として、中外製薬が販売している。
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・中外製薬株式会社 ニュースリリース