ヒトのサンプル入手が難しく、発症に至るプロセルわかっていなかった
金沢大学は2月17日、これまで解析が困難だったタナトフォリック骨異形成症の脳異常の発症プロセスを明らかにしたと発表した。この研究は、同大学医薬保健研究域附属脳・肝インターフェースメディシン研究センターの河﨑洋志教授、医薬保健研究域医学系の松本直之助教らの研究グループが行ったもの。研究成果は、米国の科学雑誌「Human Molecular Genetics」オンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
タナトフォリック骨異形成症は主に骨と脳に異常を持ち、有効な治療法のない厚生労働省の指定難病。骨では手足の骨や肋骨の短縮が見られ、脳では多小脳回や脳室周囲結節性異所性灰白質(PNH)などの異常が見られる。タナトフォリック骨異形成症の原因となる遺伝子としては、線維芽細胞増殖因子受容体3(FGFR3)が報告されているが、稀な疾患であり、またヒトのサンプルを入手することが難しいことから、発症に至るプロセスはあまりわかっていなかった。近年、タナトフォリック骨異形成症の骨異常については、京都大学よりiPS細胞を用いた研究が発表されたことで注目されていたが、脳異常については解析が遅れていた。
フェレットを用いた研究により、脳神経疾患の原因究明や治療法の開発に期待
研究グループは、タナトフォリック骨異形成症の脳異常を再現できるモデル動物の作製を試み、2015年にイタチ科の高等哺乳動物フェレットを用いることで、世界に先駆けてモデル動物の作製に成功した。
今回の研究では、このモデル動物を用いてタナトフォリック骨異形成症の脳異常のひとつであるPNHの発症プロセスを解析。その結果、PNHは神経細胞の移動の異常により引き起こされ、移動の際に足場(=レール)として使われる放射状グリア(神経細胞やグリア細胞を作り出すもととなる神経幹細胞の別名)の異常が原因であることが示唆されたとしている。
今後は、タナトフォリック骨異形成症の病態解明および治療法の開発が進むことが期待される。さらに、フェレットを用いた今回の研究を発展させることにより、従来のマウスを用いた研究では解明が困難だったさまざまな脳神経疾患の原因究明、治療法の開発が発展することが期待されると、研究グループは述べている。
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