これまで存在しないと考えられていた樹状細胞
東北大学は2月16日、唾液腺の中に、生体防御機構で司令塔として中心的な役割を担う樹状細胞を発見したと発表した。この研究は、同大学大学院歯学研究科口腔分子制御学分野の菅原俊二教授らの研究グループが行ったもの。同成果は、欧州免疫学会誌「European Journal of Immunology」の2月号に掲載されている。
画像はリリースより
唾液は口の持つ本来の働きを十分に機能させ、健康を維持する上で非常に重要な分泌液だ。この唾液を産生・分泌する唾液腺は重要な臓器であり、唾液腺の機能低下は唾液分泌低下となり「口腔乾燥症」などを引き起こす。
唾液腺の健康を維持するために唾液腺特有の防御免疫が働いているが、不明な点が多く残されている。免疫機構をコントロールする働きをもつ抗原提示細胞には、樹状細胞とマクロファージがあるが、これまで唾液腺にはマクロファージは存在するものの、樹状細胞は存在しないと理解されていた。
樹状細胞のコントロールにより、唾液腺の生体防御機能を増強できる可能性も
今回の研究では、唾液腺中に多数のマクロファージと比較的少数の樹状細胞を発見。唾液腺樹状細胞は1型と2型に分類され、骨髄の樹状細胞前駆細胞から分化して、樹状細胞増殖因子のFlt3L依存的に増殖することから、正真正銘の樹状細胞であることが証明されたという。
一方、唾液腺マクロファージは、骨髄の単球から分化。また、唾液腺の1型樹状細胞は、異物であるタンパク質抗原を処理してナイーブCD8+ T細胞を活性化し、ウイルス排除作用をもつインターフェロン産生を促すクロスプレゼンテーションという機能を発揮することが証明されたという。さらにFlt3Lは、1型の唾液腺樹状細胞のクロスプレゼンテーション能力を維持しつつ、唾液腺樹状細胞数を著しく増加させることから、Flt3L投与により唾液腺の生体防御能を高められる可能性が示唆された。
同研究は、唾液腺樹状細胞が唾液腺の健康維持に重要な働きをしていることを示すものであり、研究グループは、唾液腺の感染防御機構やシェーグレン症候群など、唾液腺疾患の発症機序の解明にも貢献することが期待されるとしている。
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