結節性硬化症に伴う難治性てんかん患者の部分発作に特化した適応
スイス・ノバルティスは1月31日、「アフィニトール(R)」(欧州ではVotubia(R)、一般名:エベロリムス)分散錠が、2歳以上の結節性硬化症(TSC)に伴う難治性てんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)に対する併用療法として、欧州委員会から承認を受けたことを発表した。EUの全加盟国28か国とアイスランド、ノルウェーにおいて、TSCに伴う難治性てんかん患者の部分発作に特化した適応で初めて承認された薬物治療となる。
TSCは稀な遺伝性疾患で、患者数は世界で最大100万人、その約85%がてんかんを合併している。コントロールできないTSCに伴うてんかん発作は患者の体を衰弱させる。同剤は、TSC患者の良性の脳腫瘍である上衣下巨細胞性星細胞腫(SEGA)および腎血管筋脂肪腫(腎AML)の治療を適応とする唯一の非外科的治療選択肢となる。
抗てんかん薬でのコントロールが難しい患者のアンメットニーズに応える
同剤は、複数の細胞機能を調節するタンパク質である哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)の働きを阻害する。TSCは、TSC1遺伝子またはTSC2遺伝子の変異によって引き起こされ、mTOR経路のシグナル伝達が異常に活発になり、細胞の成長および増殖の増大、神経細胞の興奮性亢進、皮質構造およびネットワーク機能の異常、およびシナプス可塑性の異常へとつながる。前臨床試験では、異常に活発なmTOR活性が、TSCにおける脳でのてんかん発症プロセスに寄与するてんかん原性の種々のメカニズムに影響を与える可能性があることが示唆されていた。
今回の承認は、ピボタル第3相試験「EXIST-3」の結果を受けてのもの。EXIST-3は、難治性てんかん部分発作が認められたTSC患者を対象とする併用療法として、高用量および低用量の同剤の有効性および安全性を検討する、無作為化二重盲検プラセボ対照3群比較試験。欧米各国のほか、日本も参加した。同試験から、アフィニトールを併用治療薬として使用した場合に、TSCに伴う難治性てんかん部分発作の頻度が、プラセボと比較して有意に軽減されることが示されたという。
同剤のEUにおけるTSC関連の適応としては、今回の承認はSEGAおよび腎AMLに対する承認に続き、3つ目となる。同社は、難治性てんかんの部分発作という最も身体を衰弱させるTSC症状に苦しむ患者のアンメットニーズを満たす、新しい治療選択肢を提供することができるとしている。
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・ノバルティス ファーマ株式会社 プレスリリース