大腸がんの早期スクリーニング法を開発
神戸大学は2月15日、トリプル四重極型ガスクロマトグラフ質量分析計を用いて、血液中の代謝物を網羅的に分析するメタボロミクス解析により、早期の大腸がんであっても非常に高感度で検出できる新たなスクリーニング法を開発したと発表した。この研究は、同大学大学院医学研究科と、株式会社島津製作所、国立がん研究センターの共同研究によるもの。研究結果は、米科学誌「Oncotarget」オンライン版に掲載された。
同大学の研究グループは2012年に、大腸がん患者と健常検体の血清をガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)による臨床メタボロミクス解析手法を用いて分析し、大腸がん診断に利用できる4種類の代謝物マーカーと、それを用いた信頼性の高い診断予測式をすでに開発していた。しかし、この予測式は、CEAやCA19-9など既存の腫瘍マーカーと比較して有用性が高いと考えられるものの、実際にスクリーニング法として利用するには感度や特異度の面で十分ではなかった。
感度・特異度とも96%超の大腸がん診断予測式を作成
そこで研究グループは、島津製作所の独自技術である高速スキャン制御技術(ASSP)とSmart MRM技術を組み合わせた高速・高感度GC/MS/MSを利用し、血漿中の代謝物をより高精度に定量できる分析手法を開発。この手法を用いて、国立がん研究センターに保管されている臨床情報の明らかな600以上の大量の検体を分析することで、非常に高性能なスクリーニング法の開発に成功した。
今回、この方法で大腸がん患者と健常者検体の血漿中の代謝物を網羅的に解析した結果、大腸がん診断に利用できる8種類のマルチバイオマーカー(ピルビン酸、グリコール酸、トリプトファン、パルミトレイン酸、フマル酸、オルニチン、リシン、3-ヒドロキシイソ吉草酸)を発見。これら8種類の代謝物データに基づいて、感度、特異度とも96%を超える大腸がん診断予測式を作成したという。さらに、この診断予測式は、ステージ0やステージ1といった早期大腸がん患者においても、高い感度を保つことが確認できた。
研究グループは、この診断予測式が大腸がんの早期発見に寄与するだけでなく、リンパ節転移や遠隔転移を有さない大腸がん症例に対する新たなスクリーニング法の開発も期待できると述べている。
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