β5tが胸腺皮質上皮細胞で特異的に発現する分子機構はわからなかった
徳島大学は2月13日、キラーT細胞を産生する分子機構を解明したと発表した。この研究は、同大学先端酵素学研究所免疫系発生学分野の大東いずみ准教授、髙濵洋介氏、初期発生研究分野の竹本龍也氏、東京大学大学院薬学系研究科の村田茂穂氏の研究グループによるもの。研究成果は、「Nature communications」に掲載されている。
画像はリリースより
免疫の司令塔であるTリンパ球は、胸腺で産生され、ウイルスなどの病原体やがん細胞を認識し生体防御を担っている。Tリンパ球は胸腺で産生される過程で、病原体などを認識することができる細胞を選別するプロセスである「正の選択」を受け、機能的に有用なTリンパ球が産生される。
Tリンパ球の一種であるキラーT細胞が「正の選択」を受けて産生されるには、胸腺プロテアソームを構成する分子であるβ5tという分子が胸腺皮質上皮細胞で特異的に発現することが必要だ。しかし、β5tが胸腺皮質上皮細胞で特異的に発現する分子機構はわかっていなかった。
Foxn1による胸腺皮質上皮細胞でのβ5tの発現制御が産生に重要な分子機構
遺伝子発現は、ゲノムDNAに特異的に結合するタンパクである転写因子によって制御されている。β5tのゲノムDNA上には、胸腺の形成に重要な転写因子であるFoxn1が結合することができる遺伝子配列が複数か所ある。
研究グループは、培養細胞を用いた試験管内実験で、β5tの転写開始点近傍の配列(site#13)にFoxn1が結合し、遺伝子発現を促進することを発見。また、マウス生体から単離した胸腺皮質上皮細胞では、site#13にFoxn1が結合するが、同じくFoxn1を発現する髄質上皮細胞ではこの配列にはFoxn1は結合しないことを明らかにした。さらに、site#13のFoxn1結合配列に変異を導入したマウスを作製。この変異をホモで持つマウスの胸腺皮質上皮細胞ではβ5tの発現が低下し、胸腺でのキラーT細胞の産生に障害をきたすことを見いだしたとしている。
今回の研究結果により、Foxn1による胸腺皮質上皮細胞でのβ5tの発現制御は、胸腺でのキラーT細胞の産生に重要な分子機構であることが解明された。今後、感染症などの免疫システムが関連する疾患の治療法開発につながることが期待されると、研究グループは述べている。
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・徳島大学 研究成果