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漢方薬原料、国産化へ前進-国内栽培産地の裾野広がる

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2017年02月15日 AM10:15


■薬用作物の地域相談会で成果

漢方薬原料となる薬用作物の国内栽培は、少しずつではあるが裾野が広がっているようだ。全国農業改良普及支援協会と日本漢方生薬製剤協会が設立した薬用作物産地支援協議会が全国8カ所で開催した「薬用作物の産地化に向けた地域相談会」では、全体の参加者こそ500人弱と前回を下回ったが、既に薬用作物の試作を始めたという農家が多く参加した。3年前は「どんな薬用作物を栽培していいか分からない」という状況から、マッチングに進んだ案件もあり、前進を感じさせた。日漢協の生薬国内生産検討班の松葉知浩氏は、「国内での薬用植物栽培の活性化に向け、いろいろな産地がスタートラインに立ちやすい状況が整いつつある」と手応えを見せる。

日漢協、、農林水産省は、海外輸入に依存する漢方薬原料となる薬用作物の安定供給に向け、国内の薬用作物栽培を推進するため、2013~15年度に「薬用作物の産地化に向けたブロック会議」を開催し、漢方薬メーカー(実需者)と生産者が生産を拡大したい品目と需要ニーズをマッチングし、延べ37件がマッチングに進んだ。16年度からは、農水省支援事業「薬用作物産地支援体制整備事業」の一環として、地域相談会にリニューアルした。

地域相談会では、ブロック会議で実施してきた説明会に加え、情報収集したい産地側と同協議会が対面でじっくりと話し合う個別相談会を新たに設けた。参加者は農家や全国農業協同組合連合会(JA)、都道府県や市町村の自治体関係者などが集まり、薬用作物栽培を既に始めているという農家も多かった。

松葉氏は、ブロック会議に比べ、地域相談会での個別相談会では産地側と活発な意見交換ができたとし、「産地拡大に向けた前向きな質問が多く見られた」と高く評価する。産地側からは、「とにかく漢方薬メーカーとマッチングし、共にやっていきたい」という要望が強く寄せられ、既に試作を行っている農家からは加工に関する質問や、「今、生産している品目以外に、他にどんな品目が自分たちの地域に合っているのか教えてほしい」「試作した薬用作物が合格か不合格かの評価をどこでやってもらえるのだろうか」という相談も目立った。地域で見ると北海道では省力化が可能な農機械、薬用作物栽培で利用できる農水省の補助事業に関する問い合わせもあった。ブロック会議開催前の「どんな薬用作物を作ればいいか分からない」という初歩的な段階からは一歩抜け出した格好だ。

しかし、薬用作物栽培に対する全般的な理解は当初に比べ浸透しているが、一般の野菜などに比べるとまだまだ低い。こうした課題への解決策として、日漢協が主体となって実施する地域相談会とは別に、全国農業改良普及支援協会が地域の普及員や営農指導者向けに薬用作物栽培の研修会を始めている。薬用作物になじみがない全国自治体の普及員や営農指導者に対しても研修機会を提供し、指導員として育成することで、地域の農家から寄せられる栽培に関する問い合わせの窓口になり、薬用作物栽培の裾野を広げたい考え。

日漢協が発表した同協会加盟会社67社を対象に行った2013年度と14年度の「原料生薬使用量等調査報告書」によると、日本産の総使用量はおよそ10%と低い割合にとどまる。日漢協では、5月に5カ年計画を策定し、原料生薬の安定確保に向け、国内での薬用作物生産に関しても明確な目標と方向性を打ち出す方針だ。

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