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がん幹細胞、手術時に用いられる診断薬5-ALAによる検出免れる-東京医歯大ら

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2017年02月13日 AM10:30

がんの進展と治療抵抗性、再発に深く関与するがんの責任細胞

東京医科歯科大学は2月3日、難治性のがんである悪性脳腫瘍などの術中診断薬(腫瘍細胞検出薬)として用いられている5-アミノレブリン酸()による検出を、腫瘍再発に深く関わるがん幹細胞が免れていることを明らかにし、がん幹細胞の代謝特性の解析から既存の鉄キレート剤デフェロキサミン()との併用でがん幹細胞の検出が可能になることを発見したと発表した。この研究は、同大学難治疾患研究所幹細胞制御分野の田賀哲也教授、椨康一助教、Wenqian Wang大学院生らの研究グループと、東京工業大学生命理工学院生命理工学系の小倉俊一郎准教授らの研究グループが共同で行ったもの。研究成果は、国際科学誌「Scientific Reports」オンライン版に2月7日付けで発表されている。


画像はリリースより

がん幹細胞は、がんを構成する多様な細胞を生み出す能力と自ら複製する能力を持ち、従来の放射線化学療法に抵抗性を示すことから、がんの進展と治療抵抗性、再発に深く関わる責任細胞と考えられており、がんの診断・治療法の開発にあたり考慮すべき重要な細胞とされている。

5-ALAは、その代謝産物で蛍光を発する性質をもつプロトポルフィリンIX(PpIX)が腫瘍特異的に蓄積することから、悪性脳腫瘍などの摘出手術時に光線力学診断薬として用いられてきた。しかし、5-ALAを用いた術中診断法のがん幹細胞に対する有効性についてはこれまで十分に検討されてこなかった。そこで、研究グループは、脳腫瘍細胞についてフローサイトメーターによる1細胞レベルでのPpIX蛍光検出系を開発し、5-ALAによるがん幹細胞の検出効率を検証した。

鉄キレート剤DFOと5-ALAの併用で、がん幹細胞の検出効率が著しく改善

脳腫瘍の中でも頻度が高く予後の悪い悪性神経膠腫(グリオーマ)のがん幹細胞を用いて、5-ALA処理後に蓄積するPpIXの蛍光強度を比較したところ、がん幹細胞は通常の大多数のがん細胞よりもPpIXの蓄積が少なく、検出が困難であることが明らかとなった。さらに免疫不全マウスの脳内移植実験において、特にPpIX蓄積性の低い(検出の困難な)細胞群が高い腫瘍形成能を有することが確認された。

さらに、研究グループは、PpIXが蛍光を発しないヘムへと変換される際に、鉄が付与されることに着目し、PpIXの蓄積に対する鉄のキレート効果を検証。その結果、鉄キレート剤DFOと5-ALAを併用することにより、がん幹細胞におけるPpIXの蓄積が通常の大多数の細胞における蓄積レベルまで劇的に亢進することが明らかとなり、5-ALAを用いたがん幹細胞の検出効率を著しく改善することに成功したとしている。

鉄キレート剤DFOは日本で承認済みの既存薬であり、ドラッグ・リポジショニングを視野に入れた脳腫瘍診断薬への適応拡大も期待できる。また、今回の研究ではがん幹細胞の特性に影響を与える代謝関連因子として鉄以外にもヘムやHO-1の存在を明らかにしており、今後それらを標的とした新たな診断法と根治療法の開発が期待できるとしている。

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