マクロファージがどのようにシリカ粒子を取り込むのかはわかっていなかった
東北大学は2月8日、シリカ(二酸化ケイ素)粒子を認識する受容体を発見したと発表した。この研究は、同大学学際科学フロンティア研究所の中山勝文准教授の研究グループと、同大学大学院工学研究科の森本展行准教授、同大学大学院情報科学研究科の木下賢吾教授、および同大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンターの田代学教授の研究グループとの異分野融合共同研究によるもの。研究成果は、米国科学雑誌「Cell Reports」電子版に1月31日付けで掲載された。
画像はリリースより
シリカの構造は結晶(クリスタル)と非晶質(アモルファス)の大きく2つに分類され、結晶シリカの微小粒子はアスベストと同様に塵肺を引き起こす危険物質だが、非晶質シリカ粒子は安全であり化粧品や医薬品にも含まれている。しかし、非晶質シリカであってもその粒子径が100ナノメール以下のナノ粒子は炎症を引き起こすことが最近の動物実験から明らかになっている。
シリカ微小粒子は体内に入ると、免疫細胞のマクロファージが認識して細胞内に取り込む。本来マクロファージは、体内に侵入した細菌を捕食するなどして生体防御に重要な役割を担っているが、結晶シリカ粒子や非晶質シリカナノ粒子を取り込んだマクロファージはストレスを感じ、NLRP3インフラマソームの活性化を介してIL-1などの炎症性サイトカインを分泌、炎症を引き起こすことがわかっていた。しかし、マクロファージがシリカ粒子をどのように取り込むのかについては、明らかになっていなかった。
粉塵微小粒子が引き起こす炎症性疾患の病態解明に期待
研究では、シリカ粒子と結合するマクロファージ受容体を発現クローニング法により探索。その結果、スカベンジャー受容体クラスBメンバー1(SR-B1)が結晶と非晶質の両シリカ粒子に結合することがわかった。この結合様式を詳細に調べるためにホモロジーモデリング法によりSR-B1タンパク質の予測立体構造を作り、シリカ粒子との結合部位を決定した。
また、SR-B1とシリカ粒子の結合を阻害するモノクローナル抗体を作り、その抗体を用いてSR-B1の機能を調べたところ、実際にマクロファージによるシリカ粒子の取り込みにSR-B1が関与していることがわかった。抗体によってシリカ粒子取り込み量を抑えると、マクロファージのストレスとなるインフラマソームの活性化も低減され、IL-1の分泌も抑制された。マウスを使った実験で、シリカ粒子を気管内に投与すると肺炎が発症するが、このとき抗体を投与することによってその肺炎を軽減することができたとしている。
今回の研究は粉塵微小粒子が引き起こす炎症性疾患の病態解明に貢献することが期待されると、共同研究グループは述べている。
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